[この町この人]昆虫はなくてはならない! 昆虫研究家・北原俊幸さん

東久留米の「昆虫展」に標本を提供する昆虫研究家

4万点を超える昆虫標本を作製してきた昆虫研究家。多摩地域の昆虫を多く採集し、その標本のほとんどを東久留米市に寄贈している。

先週から同市郷土資料室(わくわく健康プラザ内)で開催されている「夏の昆虫展」では、数多くの標本の中から抜粋された、この地域でよく見られる昆虫約1200種が展示されている。

昆虫標本を手にする北原俊幸さん

小5で清瀬市に移るまで暮らしたのは、渋谷・原宿。1950年代の当地は野原の多い場所で、身近なところでさまざまな昆虫と出会えた。

採集のきっかけは、父親。父子共に体が弱く、「外出の機会に」と一緒に出掛けたことから世界が広がった。

「そこにいる昆虫は何でも捕る」

というのがスタイル。チョウやトンボ、カブトムシなど採集の好みをはっきり持つ愛好家が多いなか、ガでも蜂でも何でも捕り、時には嫌われものの害虫もコレクションに加える。

だが――。昆虫を追った夢のような時間は、25歳まで。学校教諭になり、部活動の顧問も務めると、途端に自由な時間がなくなった。

それからおよそ半世紀。この間に環境は激減し、東京近郊では、身近で昆虫に出会うことが少なくなった。昆虫に触れない、という子も珍しくない。

「昆虫は子どもにとってなくてはならないものなのに――」

学校長まで務めた元教諭として、子どもたちが置かれる状況への危機感は強い。

「子どもは小さな動くものに興味を引かれるものです。それを追いかけていくうちに、新しい何かにどんどん出会っていく。その最初の入り口にいるのが昆虫なのです」

人が生き物と出会うという意味でも昆虫の存在は大きい。だからこそあえてこの昆虫展では、ガなどの「きれいとは言えない」昆虫も紹介している。多摩に生きる、身近な生き物の一員として。

きたはら・としゆき 1950年、東京都生まれ。清瀬市、東久留米市に暮らし、現在は長野県在住。著書に『多摩の昆虫』(東久留米市教育委員会文化課)。現在、東久留米市文化財保護審議会委員を務める。

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問い合わせは郷土資料室(☎042・472・0051)へ。

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