「ピンポン、詐欺です」――給湯器点検を促す電話が北多摩で急増中

「特殊詐欺に注意を!」 地元工務店(エネスパート)にインタビュー

2025年1月末から2月現在(18日)にかけて、西東京市、東久留米市を中心に、北多摩エリアでガス給湯器の点検を促す電話が急増しているという。

西東京市中町に本社を置くガス機器設置会社「エネスパート」によると、顧客からの問い合わせが続いており、「ガス給湯器の5年点検が義務付けられたので、伺います」という内容で、特殊詐欺が疑われる。

「安易に相見積もりをしてはいけません!」と呼び掛けるエネスパート代表の橋本祐太さんに話を聞いた。

「エネスパート」の橋本祐太代表

「点検の義務化」はうそ

――特殊詐欺への注意を呼び掛けていますね。

「最近、『こんな電話があったのだけど…』という顧客からの問い合わせが急増しています。当社のお客様だけでこれだけ問い合わせが来るということは、恐らく、この地域の『042~』で片っ端から電話しているのだと思われます。

今、掛かってきている内容は『ガス給湯器の5年点検が義務化された~』というものです。法定点検というものはありますが、点検の『義務化』はうそです。対応してはいけません」

西東京市中町にある「エネスパート」

人手不足の今、「すぐ直さないと」も要注意

――点検という理由を付けて接触し、そこから修繕などに導くという詐欺ですか?

「親切なふりをして工事を高値で実施するので悪質です。電話だけでなく、訪問してくるケースもありますが、今、工事関係はどこも人手不足です。新規立ち上げの会社ならともかく、まともにやっている会社なら、2、3カ月先まで現場予定が埋まっています。

そういう中で『今すぐ直さないと!』と急かしてくる業者には要注意です。もちろん、本当に緊急性のある場合もあるので全否定はしませんが、そこまで緊急性がある状況なら生活されている方自身が不具合を感じているはずです。

判断が付かない場合は、当社でも他の業者でも、地域に店舗を構えて長く営業している会社への相談をお勧めします。

いずれにせよ、『ピンポン』と見知らぬ人からの玄関チャイムが鳴ったら、『詐欺だ!』と疑うくらいの心構えでいるべきです。『ピンポン、詐欺です』と訴えたいですね。少なくとも、地域の皆さんには、最低限、録画機能付きのインターフォンをすぐにでも設置してほしいです」

エネスパートのガス給湯器設置の様子。高度資格を有するスタッフが作業にあたっている

「相見積もり」はやめるべき 情報が売られるリスクも念頭に!

――橋本さんは「相見積もりはやめるべき」と呼び掛けていますね。世間では相見積もりが推奨されていると思いますが

「なぜか見積りを取るときだけは、皆さん、個人情報への防御が緩くなっています。例えばネットで複数社への一括見積り依頼のようなサービスがありますが、それは、相手も知らずに個人情報を伝えていることになっています。

ネット検索で幾つかの業者を絞り込んで見積り依頼をする人が多いと思いますが、本当にその業者を知っていますか? 仮に3社に見積り依頼をして、実際に施工に至るのは1社のみです。残りの2社は、果たしてその個人情報をどうするのでしょう? 見積りをするために現地調査をしたなら、人件費だ、ガソリン代だ、駐車場代だと、数千円は掛かります。仮にですが、個人情報がそれを上回る金額で売れるとしたら、売る業者も出てくると思いませんか? その個人情報は、築年数や、居住者の人数、世帯主の概ねの年齢層など、悪用しようと思えばいくらでも応用のきく重要なものです。

もしどうしても相見積もりをしたいなら、誰もが知るような大手企業、当社のような地域に店舗を置く企業に絞るべきだと思います」

エネスパートの店内。特にガスコンロは、多摩エリア最大級の規模で展示している

なぜ、このタイミングでの電話詐欺なのか——理由はコロナ禍に

――それにしても、「点検詐欺」もあの手この手ですね。少し前は「屋根が傷んでいる」と接触してくるケースが多かったようですが、今回の「ガス給湯器」も全ての住まいに関係あるものなので、その目の付け所に驚きます。

「『ガス給湯器』についてはそんな単純なものではなく、数年前から計画的に練られたものだと想像します。今回『5年点検』というキーワードがあるのですが、では、5年前に何があったかと振り返ると、コロナ禍に思い至ります。

コロナ禍では訪問販売ができなくなり、ネットを活用しての依頼が急増しました。そのときにネットで複数社に見積り依頼した人が多数いました。

あれから5年がたって、今、その頃に取られた個人情報が『活用』されているのだと思えます。

また、当時は半導体不足によるガス給湯器の品薄で、慌ててガス給湯器を交換する人も少なくありませんでした。急いで買った方には、『5年点検』の言葉はぐっと刺さるようにも思います。

これから先もいろいろな手法が出てくると思いますが、それらはよく検討すると、年月をかけて練られたものだと分かるものでしょう。日頃から、『種』を撒かないように気を付けておくことが大事です。

こういう話の結論はいつも同じになってしまいますが、家の中まで入って来る業者については、とにかく、地域密着で顔の見えるところを選ぶことが大事です」

【取材協力】

株式会社エネスパート:西東京市中町1-4-1。西東京市保谷こもれびホールそばに本社・ショールームを構える。ガスコンロ、ガス給湯器などのガス機器類を中心に、キッチン、バス、トイレなどの水回りリフォームや、一棟丸ごとの大規模改築なども請け負っている。TEL:042-421-8335。https://www.enespert.com/

今日のつぶやき

※同じ投稿をX(旧Twitter)でもしています https://x.com/towntsushin

お知らせ