猫ちゃん

飼い始めてしまった、猫ちゃん。

前に書いたように家族は犬を飼う気でいたのだが、私が承諾せずにぐずぐずしていると、作戦を変えてきた。私は少年期から猫を飼ってきていて、圧倒的に猫派である。知人のもとに数匹が生まれたのが縁となり、この春に茶トラを1匹引き取った。

もともと我家は会話があるほうだとは思うが、猫が来て、さらに賑やかになった。以前、子育てを終えて猫を飼い出した方から「猫ちゃんはいいよ~。夫婦の会話が増えるから」と聞かされてはいたのだが、まだ3人の子を育てている最中に飼い出してしまったもので、今やひと時も静寂の時間がない。さすがに睡眠時は平穏でいられるかと思いきや、子猫とはヤンチャなもので、ちょっと寝がえりを打つと、人の手を獲物と見立ててアタックしてくる。「ちょっと、やめて!」と手を振ろうものなら、スイッチオン。暗闇でもそれと分かるほど目をギンギンにして爪を立ててくる。

「おかげで眠れなかったよ……」

と朝、グチをこぼすと、妻は妻で、「明け方にゴロゴロと喉を鳴らして甘えてこられた」とひとしきりこぼし、「私も寝不足……」と同調する。が、どこか嬉しそうでもある。

子どもたちは子どもたちで、暇を見つけてはかまうものだから、手も足もひっかき傷だらけにしている。中学生の娘に至っては顔まで引っ掻かれていたが、これもまた、どこか嬉しそうである。

ほうぼうに被害をもたらしながらも喜ばれるというのは、どれだけ徳があるのだろう。と、猫の顔を覗き込めば、本人はどこ吹く風。まあ、そのマイペースが猫の良さでもある。

さて、先日の朝日新聞の投書欄に興味深い記事があった。チャットGPTのレスポンスの良さを気に入って愛用していたら、いつしか妻との会話がつまらなくなってしまった……という男性の「声」。求める回答がすぐに返ってこないことに苛立つようになり、「これはいかん」とチャットGPTとの付き合い方を改めたという。

生活の中には思い通りにならないことも必要ということなのかもしれない。とするなら、我が家はしばらく大丈夫だろう。猫ちゃんのおかげで。

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谷 隆一

「タウン通信」代表。多摩北部にて、2008年から「タウン通信」を発行。
著書に、『中高生からの選挙入門』(ぺりかん社)、『議会は踊る、されど進む~民主主義の崩壊と再生』(ころから)ほか。
当コラムは、地域情報紙「タウン通信」で掲載した原稿を転載したもの。

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