西東京市に長く暮らした詩人・茨木のり子、画家のいわさきちひろ、美術作家の岡上淑子の3人の女性の「おしゃれと表現」をテーマにした企画展「装いの翼」が、練馬区下石神井の「ちひろ美術館・東京」で2月1日まで開かれている。それぞれの作品と共に、実際に着用していた洋服などが展示されている。
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私服・装飾品などを作品と併せて展示
企画展は、肖像写真や愛用の品を通して3人の「装い」に着目し、それぞれの美意識や生き方、素顔に迫るというもの。いわさきちひろが手作りしたワンピースなどが展示されている。
3人に共通するのは、若いときの戦争体験。年齢は多少異なるが、3人とも比較的裕福な家庭に育ち、幼少時からおしゃれや美を好みながらも、物資が不足し、美しいものが奪われていくという体験をした。茨木のり子は戦時中、唯一見られる美しいものとして星空を愛し、東京で空襲を受けた後に疎開する際には、星座盤をカバンに忍ばせていたという。
また、3人とも洋裁をたしなみ、自分でデザインして私服を作るなどしている。茨木のり子のコーナーでは、愛用していた足踏みミシンが初公開されている。
それぞれ戦争体験を背景に、平和への思いを表現した
茨木のり子関連では、死後に発見された、夫との日々に関連した40編の詩を納めたクラフトボックスの展示も注目点。新たな茨木のり子像をもたらした作品群で、自筆原稿なども展示されている。
彼女の代表作に戦中・戦後を詠った「わたしが一番きれいだったとき」があるように、いわさきちひろ、岡上淑子共に、作品の根底には平和への思いがある。展示室で紹介されている「平和で、豊かで、美しく、可愛いものがほんとうにすきで、そういうものをこわしていこうとする力に限りない憤りを感じます」といういわさきちひろの言葉が象徴的だ。

(写真提供:宮崎治)
企画展にも協力した「幻のコラージュ作家」
なお、岡上淑子はコラージュ作品で世界的に高く評価される作家だが、20代で注目を集めたものの家庭生活に入るなどしたため、70代で再脚光を浴びるまで表舞台から姿を消している期間が長かった。
そのため、幻の作家などとも呼ばれる。現在98歳で、この企画展にも協力した。3人に生前の交流はなかった。
書籍と連動企画
今回の企画展は、昨年9月に発行された書籍『装いの翼―おしゃれと表現と』(行司千絵著・岩波書店)と連動したもの。同書では3人の生き方や「装い」への関わり方などを描いている。著者の行司さんは京都新聞社の記者で、自身も洋裁をしており、会場では母のために作った洋服の展示もある。
ちひろ美術館・東京(下石神井4の7の2)は、いわさきちひろの自宅兼アトリエ跡に建てられている世界最初の絵本美術館。17日㈯は午後2時からギャラリートークがある。
入館料1200円(18歳以下・高校生以下は無料)。月曜休館。同館の学芸員・原島恵さんは企画展について、「3人にとって『装い』は自由や自分らしさを得ることだったと思います。当館では常設展示はなく、企画展ごとに入れ替えているので、ぜひお見逃しないようご来館ください」と話している。
書籍『装いの翼』は2640円。全国書店・ネット書店で販売中。
1/6締切! 読者3組6人を企画展にご招待
今回、ちひろ美術館・東京のご協力で、読者3組6人を同企画展に招待する。
応募は下記の動画内にあるキーワードを明記し、下記の応募フォームから。応募締切は2026年1月6日。当選者の発表は招待券の発送をもって代える。
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