この地域を含めた「武蔵野」に関心のある人にお薦めしたいのが、日本における「地域学」をリードし、とりわけ東北学の提唱者として知られる民俗学者・赤坂憲雄さんの近著『いくつもの武蔵野へ―郊外の記憶と物語』(岩波書店)だ。
「東京人」「武蔵野樹林」などのさまざまな雑誌に寄稿してきた「武蔵野」に関する原稿を1冊にまとめたもので、主に、府中で育った自身の体験に基づく考察の章と、文学作品などから思考を展開していく章とで構成されている。

太宰治、大岡昇平、北條民雄、さらにはスタジオジブリのアニメまで多彩な作品が取り上げられ、一口に「武蔵野」といっても、さまざまな表情があることを改めて教えられる。国木田独歩『武蔵野』に「どの路でも足の向くほうへゆけばかならずそこに見るべく、聞くべく、感ずべき獲物がある」の一節があるが、まさに、気の向くままページを開き、雑木林を迷い歩くように思索の世界に身を浸せる一冊だ。
四六判、286㌻、3080円。全国書店およびネット書店で販売中。









