名前を尋ねられたノラネコが「いっぱいあってな……」と答える『ルドルフとイッパイアッテナ』という児童文学作品があるが、あれを想起させる事案が、いま我が家で起こっている。
我が家がネコを飼っていることは何度かこの欄でも触れてきたが、その気配を察したのか、2カ月ほど前から、白黒の柄の雄ネコが朝に夕に訪ねてくるようになった。口元に鼻ひげのような黒い模様があり、印象的な顔をしている。私はチャップリンの連想から「おい、チャップ」とからかっていたが、いつしか我が家では、娘が呼び出した「ブッチー」に定着した。近所のあちこちで目撃証言のあるネコで、恐らく各所で、さまざまに呼ばれていることだろう。
問題はこのネコが、飼いネコなのかノラネコなのか分からないことにある。分からない理由は幾つかあるのだが、
1、毎日出没する。最近は夜の9時頃でも現れる
2、エサをやると、がっついて食べる
3、食べ終えると、何事もなかったかのように、見事に冷淡に去っていく
4、ノラネコにしては毛並みがきれい
5、人になれていて、ときには抱っこされ、ゴロゴロと喉を鳴らす
6、首輪をしている。しかも、一度、柄が替わった
とりわけ5と6が重要ポイントで、人の元で暮らしていたと確信させるのだが、事情があって捨てられたとか、飼い主に異変があってノラとなったなど、さまざまな可能性を思わせる。飼いネコにしては自由過ぎる。だが、ノラとも言い切れない。仮に飼いネコなら、よその家でエサだけもらってくるという、なかなか賢い飼い方をしている。
そんなブッチーだが、なれてきたことに加え、この寒さが重なり、最近はやたら家の中に入りたがるようになった。入れてやりたい気もするのだが、どうしたものかと毎晩迷っている。
最大の問題はブッチーが異常なほどなつっこい点で、要するに、可愛い。これが可愛くなければそこまで迷わないのだが。やはり、愛嬌は大事だ。一年で最も寒さの厳しくなる時期を前に、我が家の悩みも深まっている。

