下郷のなぞ

久々に観光地が賑わったこのゴールデンウイークに、我が家も乗り遅れまいと福島県下郷町に出かけてきた。西東京市の姉妹都市で、前から一度は行かねばと思っていた地だ。国の天然記念物だという「塔のへつり」など観光名所が多く、新緑も美しくて、家族旅行に適した素敵な場所だった。

江戸時代の宿場町・大内宿では名物だという高遠そばも味わったのだが、ここで一つのなぞが残った。ご存じの方も多いと思うが、大内宿の高遠そばには、長ネギを箸の代わりにするという食べ方がある。店でもそのように勧められ、「ならば」とネギを手にしたのだが、そばをすくおうとすると、これがまたツルツルと滑る。もしやこれはネギをかじりつつそばをすするのでは? とやってみると、この手法は案外いい。碗に顔を埋めるような格好となり見てくれは悪いのだが、もはや旅の恥は搔き捨てという思いで、食べ進めた。

が、ネギも上の青い部分になってくると、辛みが強すぎて味わうどころではなくなってくる。最後はひーひー言いながら、2センチほど残してギブアップ。割り箸を使った。

店が混んでいたので高校生の息子と席が離れていたのだが、息子はネギを完食したと放心している。「意地で食った」という息子と互いの健闘を称え合ったのだが、「ほかの席の人はネギをほとんど残していたよ」という下の娘の一言で、気分が一変した。

もしやこのネギは、本当に箸代わりにするもので、かじりつくものではないのではないか? 長く残すことこそ粋なのではないか?

――となると、相当な旅の恥を搔き捨ててきたことになるが、正しい作法はどちらなのだろう。未だ気になっている。

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谷 隆一

「タウン通信」代表。多摩北部にて、2008年から「タウン通信」を発行。
著書に、『中高生からの選挙入門』(ぺりかん社)、『議会は踊る、されど進む~民主主義の崩壊と再生』(ころから)ほか。
当コラムは、地域情報紙「タウン通信」で掲載した原稿を転載したもの。

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