重症心身障害児者のケアや発達教育を家族だけで抱え込まなくても、誰もが安心して暮らせる地域にしたい――。そんな一人の女性の願いが形になり、この春、多機能型事業所「うさぎのみみ」が西東京市にオープンした。現在は未就学児への「児童発達支援」と、18歳以上への「生活介護」を行っているが、将来的には総合的な福祉の拠点を目指している。

「ゆりかごから最期まで」を目指して、開設から3カ月
文理台公園に近い「うさぎのみみ」は、今年2月にオープン。重度の障害などで介護や医療的ケアが必要な0~6歳児と、18歳以上を対象に、安心して過ごせる「居場所」を提供している。
取材で訪ねた日は未就学児2人と30代の男性が過ごしており、子どもたちは、音楽を聴いたり、ごっこ遊びをするなど、発達支援のプログラムを受けていた。なお、定員は5人だ。
運営するのは「一般社団法人うさぎのみみ」。法人の設立および一連の事業は、代表理事の本間りえさんの思いから始まった。
2児の母である本間さんの長男は、26年前の6歳のときにALD(副腎白質ジストロフィー)という難病を発症し、突然、日常的な医療的ケアが必要な状態になった。以来、本間さんは、家族がケアを引き受けざるを得ない現実や、地域の中に重症障害児者の居場所がほとんどないことを実感してきた。

重度障害児たちの居場所のニーズは高まっている
一方で現在は、医療の進歩もあり、重度の障害があっても生存しやすいため、医療的ケア児者や重度障害児者の地域での居場所のニーズは高まっている。
「家族の高齢化もありますし、シングルなどで働く必要のある方も多い。家族だけで介護を担うのではなく、地域の中でサービスを選びながら暮らせるようにすることが必要です」
と本間さんは話す。
今回のオープンに際しては、そんな本間さんの理念に賛同し、多方面から協力者があった。クラウドファンディングでは、500万円以上が集まっている。
また、本間さんは息子の難病に関連して認定NPO法人「ALDの未来を考える会」の理事長も務めており、全国の病院などで講演も多数行ってきている。そのつながりから、医療関係者の支援も多く得られた。

理念は「みんなの居場所と出番を」
そのようにして始まった「うさぎのみみ」では、今後、放課後等デイサービス、訪問介護、ショートステイ、クリニックなどと事業を増やし、最終的には、終末期医療にまで関わることを目指している。
理念に掲げているのは「みんなの居場所と出番を」。地域と当事者・家族を結ぶのが目標だ。
「地域の人たちが行き交う場にしたい。何かボランティアしたい、関わってみたいという方も、お待ちしています」
と本間さん。すでに、近隣の店との交流や、生花店からのロスフラワーの提供などが行われている。サポーターズ会員も募集中。
詳しくは事務局(☎042・439・9568)へ。
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