議員と学生を結ぶNPO理事、そして新人議員の視点から
地方政治への関心の低下が問題視されているなか、2018年末の選挙で初当選した西東京市の田村広行市議会議員を訪ねました。
田村議員は、大学生のときに議員インターンシップを運営するNPO法人を立ち上げ、今も理事という顔を持ちます。
その活動の動機は「若者の政治への関心を高めたい」というものです。自ら政治家となった今も「政治に興味を持ってもらうこと」が大きなテーマだといいます。
田村広行議員がNPO法人「I―CAS(アイカス)」を立ち上げたのは1999年10月、大学3年の時です。大学生と議員とをつなぐ、仲介役となる団体です。
「高校3年の時、ある人を介して近隣の市の市議候補の活動をお手伝いする機会があったのです。その候補の方は自転車で動き回っているし、事務所は古い元店舗、昼食はコンビニ弁当。それまで、私の持っていた政治家のイメージとかなり違っていました」
それは「政治家といっても、普通の人たちなんだな」という感覚だったといいます。
自分たちは、勝手に政治家のイメージを作り上げていただけではないのか、そう思えました。それが原体験になりました。
若者の政治離れをなくしたい
アイカスの活動は、若者の政治離れ、政治への拒否反応を解消し、政治や政治家に対して感じる「壁」を壊そうということを目的としました。
これまでに約1800人の大学生にインターンシップを経験してもらい、学生本人だけでなく、その周囲の人たちにとっても「壁」はかなり低くなったと感じています。何人かは政治家の道へ進んだ者もいます。
自ら市議への挑戦
西東京市議会議員への挑戦は、実は2014年に続いて2回目です。前回も無所属での立候補でした。
アイカスの活動を通して、それなりに政治家の姿を見知っていたはずですが、自分の選挙となると別物でした。
ほとんど1人で選挙活動をこなし、あえなく落選。そして、昨年の再チャレンジとなります。
「とにかく、政治を閉ざされた場ではなく、市民に開放していきたい。この思いは、ずっと変わらないですね。そのため、できるだけ分かりやすい情報を発信し、疑問や質問が出たら即座に答えるようにする。政治や議会との壁が低くなれば、市民の意見が反映されやすくなるはずです」
西東京市の市議選投票率約37%は多摩26市でも目立って低い。そのことへの強い危惧があります。
「最低でも50%はいってほしいですよね。投票率が低いということは、一部の人の意見しか政治に反映されないということです。普通に暮らしている市民の意向はまったく関係なくなってしまう。どのような政策であっても、必ず市民の生活には影響してくるわけですから、とにかく関心を持ってほしいのです」
無関心の責任は……
市民の無関心は、議員にも責任があるといいます。
政治の世界だけで通用する用語が頻発すれば、政治と市民との乖離は避けられません。
それを分かりやすく伝える議員は多いとはいえそうにない。メディアも同様です。
「今後の選挙では、ぜひ、候補者のホームページやチラシに目を通して、自分の意見に近い人を探してください。分からないことがあれば、どんどん聞いてください。その時にきちんと説明できない候補者は能力がないと言わざるをえないでしょう」
もうひとつ、と付け加えてくれました。もし投票した候補者が当選したら、その動向に注目してほしい、と。
本当に重要なのは、選挙後の活動です。
生活を豊かにする政治が行われているのかどうか、それを判断するのは私たち自身でしかないのですから。