少し前になるが、絵本の挿絵で著名な山脇百合子さんが亡くなった。この地域にお住まいで、2002年にインタビューしたことがある。
親子ほどの年の差がある私にも丁寧な応対で、あれだけの著名人でありながら、掲載後にはお礼の電話までくださった。描かれた絵そのもののように、愛らしく温かい方だった。
私にとってその取材自体が大切な思い出になっているのだが、このときは、編集過程も忘れられないものになった。経験の浅い私の記事を先輩が直したのだが、そのとき先輩は、山脇さんのことも、代表作『ぐりとぐら』も知らなかった(!)のに、しばらく絵本の表紙を眺めてから、「幸せ運んで40年」という見出しをすっと付けた。プロってすごいな、と驚嘆させられた場面だった。

あれから20年が経ち、私も相応に経験を積んできた。現在では、この地域紙をベースに、各種の制作物も手掛けている。
そんななかで自分史を作らせていただいた方に、西東京市の古谷康之さんがいる。先日、古谷さんの訃報を受け取った。もともと余命宣告を受けて自分史を作ることになったのだが、「年を越せない」と言われていた方が1年近く長く生き、その間、自分史を配って、旧交を温めることもあったようだった。
奥様からお知らせいただき焼香に上がると、遺影の前に、作成された自分史『道』が置かれていた。
デジタル化の進む社会だが、紙の出版物には、実物として手に取れる良さがある。そこで伝わるのは、やはり温もりなのだろう。
読み飛ばされる宿命にあるタブロイド紙でも、人の思いをちゃんと伝えていかなきゃ、と改めて思わされた2つの訃報だった。