年の終わりに

個人的には、この一年は、息子の高校受験に振り回された年だった。

受験は大変……とは聞いていたが、体験してよく分かった。高校受験の場合は、子ども自身が思春期の不安定な中にいる難しさも重なるのだろう。頑張っているな! という時期もあれば、何やってんだ、お前! みたいな時もある。

と、まあ、そんな息子は、いよいよ受験校を決める段階にきて、夢と不安とが入り乱れるかなりナーバスな状態となっている。先日は塾の大事な授業をすっぽかした。

これはいかん、と思っていた数日後のこと。夕方に会社まで電話があり、「遅刻して塾に行ったわよ」と妻からの連絡。一瞬、また授業をさぼるのではないか、という疑念が胸をよぎった。

で、慌てて仕事を切り上げ、塾まで様子を見に行くことに。自転車に飛び乗ったが、寒いし、距離は長いし、心がすさんでくる。ひとまずは塾の駐輪場に息子の自転車を認めほっとしたが、苛立ちは消えず帰路についた。

ところが、その途上のことだ。突然、前方の夜空がぱあっと明るくなり、エメラルドグリーンの光の帯がすっと流れて、最後は砕け散るように白い霞を残して消えた。あれを火球というのだろう。生まれて初めて見た。自分が見てきたあらゆるものの中で、最も美しいものだった。

急に心が晴れ、息子の通塾を確認しに出掛けたことをラッキーにさえ思った。息子の遅刻があったからこそ、予告のない流星に、あの瞬間、あの方角で出会えたのだ。

同時に、こんなふうにも思った。くさくさした気分を抱えていても、進んでさえいれば何か輝くものに出会える、と。

皆さま、よいお年を。

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谷 隆一

「タウン通信」代表。多摩北部にて、2008年から「タウン通信」を発行。
著書に、『中高生からの選挙入門』(ぺりかん社)、『議会は踊る、されど進む~民主主義の崩壊と再生』(ころから)ほか。
当コラムは、地域情報紙「タウン通信」で掲載した原稿を転載したもの。

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