大学無償化ならず

この原稿を書いている12日現在(2023年)、議論を呼んだ多子世帯の大学無償化に関して、「扶養の子が3人以上」「金額の上限あり」という方針が示されている。我が家は完全にその対象家庭なので注視してきたが、思いっきり肩透かしを喰らった気分だ。

もとより、ないものと考えていたのだから、多少でも頂ければラッキーなのだが、盛大に花火を上げられた分、何とも言えぬやるせなさが残る。まだ決着は分からないが、中途半端な感じが否めない。

反対意見は概ね不公平感から来ているようで、その気持ちは分かる。子を持てば当然一人立ちするまでの教育費を試算するもので、大学に行くかどうかはほぼ最初の段階でカウントすることになる。そのうえで余裕がありそうなら、私立高校や中学受験を考えるわけで、その段階で大学を国公立か私立かなどは到底決められない。従って、実際に進学するかは別として、大抵は私大を前提にして貯金していくことになる。ざっくりと学費を年100万円で設定するなら一人頭400万円。仮に20年間で貯めるなら、年20万円だ。

子が3人いるなら、単純計算(年齢差無視)で、年60万円の貯金を要する。大学進学を目指して、塾だ、予備校だとなれば年100万円前後の出費がかさみ、言いたくないが、食費や交通費なども人数分が加算される。「これでは3人も育てるのは無理。一人をしっかり教育したい」という判断があるのは自然に思える。

多子世帯への大学無償化はこのハードルを飛び越えるためのもので、貯蓄分を消費に回すパワーもあったと思うのだが、尻すぼみとなった。個人的には「ちょっと楽になるのかな?」ぐらいの印象しか持てず、マインドは全く変わらない。

まあ、変わらず必死に働けよ、というメッセージだと受け止めれば、それはそれで清々しいか。

来年も頑張ります。皆さま、どうぞよいお年を。

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谷 隆一

「タウン通信」代表。多摩北部にて、2008年から「タウン通信」を発行。
著書に、『中高生からの選挙入門』(ぺりかん社)、『議会は踊る、されど進む~民主主義の崩壊と再生』(ころから)ほか。
当コラムは、地域情報紙「タウン通信」で掲載した原稿を転載したもの。

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