水が苦手な子ども

この欄で人の嗜好やライフスタイルに言及するのはとても気を使うのだが、昨年12月、理解し難い新聞記事に出合い、今も半信半疑でいることがある。東京新聞が報じた「水を飲めない子ども」というトピックだ。

記事によれば、八王子市の中学校の2年生69人にアンケート調査した結果、10人が「水を飲むのが苦手」と答えたという。さらに事例として、熱中症の症状が出ている子に水を渡しても飲めないケースがあったと紹介されている。

本当だろうか? 

記事中ではコロナによるマイボトル持参が影響しているとの指摘もあったが、私には腑に落ちない。水道水を飲まないことへの理由づけにはなるが、「苦手」についての説明にはなるまい。「苦手」ということはつまり、「無理して飲む」ということである。水を? これを、どう考えればよいのだろう?

否定するような言い方になってはいけないのだが、私からすると、水を飲むというのは生きるうえでの基礎であり、そもそも得意とか苦手とかそういう範疇にないものに思える。それに、飲んだときの体が澄んでいくようなあの感覚は、水でしか得られまい。私なんぞは深酒のたびに、「いや~、やっぱり水だな!」と救われる思いをしている。

いや、もちろん、「そんなものは好みの問題だ」と言われれば、返す言葉はない。

そういえば昔、井上陽水が「なんにもないけど、水でもどうです」と歌っていた。あれは、なけなしのおもてなしを表現したわけだが、いつか、「帰れ」の意味で受け取られるようになるのだろうか。「御免」という曲で、歌詞はこの後、「なんにもないので~御免」と続く。それにかこつければ、この原稿の締めはこんな感じか。

結論出なくて~御免。

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谷 隆一

「タウン通信」代表。多摩北部にて、2008年から「タウン通信」を発行。
著書に、『中高生からの選挙入門』(ぺりかん社)、『議会は踊る、されど進む~民主主義の崩壊と再生』(ころから)ほか。
当コラムは、地域情報紙「タウン通信」で掲載した原稿を転載したもの。

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