2026-10-07
認知症の妻に2度目のプロポーズ――今年6月に最愛の妻を亡くした西東京市の90歳男性が、ご葬儀の出棺の際に、棺の中の奥様に花のついた結婚指輪(フラワーリング)を贈ったというエピソードを明かしてくれた。(※ご家族のご意向により匿名で記載します)
認知症を介護して17年
夫妻が結婚したのは62年前。職場で出会い、一回目のプロポーズは六義園でのデートで行った。
その後、夫妻は3人の子に恵まれ、奥様は地域でヘルパーの仕事などもして過ごした。
奥様に異変が表れたのは70代になって間もなく。「ちょっと様子が変」というヘルパー仲間からの助言を元に検査をし、しばらくして軽度認知障害と判明した。
それからの夫妻は、認知症の進行を止めるために共に闘った。規則正しい生活をし、毎晩脳トレに励み、特に一緒に時間を見つけては歌を歌った。歌は、逝去前の奥様が食事を取れない状態になっても続いた。最後まで、二人の心が通じるひと時だった。
「来世でも一緒になろう」
自宅での老老介護から始まった介護は、後半は入院生活となり、17年間に及んだ。
2度目のプロポーズはその入院生活の病室でのこと。新型コロナウイルスのため約1年半、直接の面会ができない時期があり、久々に会えたときに、思い切って「来世でも一緒になろう」と口にした。
夫妻は日蓮宗を信仰しており、来世を信じてきた。そのときの奥様は、入院前よりもはっきりと表情の分かる様子で、力強く手を握り返してきたという。
奥様は2月に誤嚥性肺炎を発症し、6月に逝去。その葬儀の際に葬儀社に一連の話をしたところ、花のついたフラワーリングを2つ用意してくれた。男性は最後の出棺のときに奥様の薬指にそのリングをはめ、「約束通り、結婚式だよ」と現世での最後の別れをした。悲しみはなく、参列者から拍手が湧いたという。
もう一つの、男性の分のフラワーリングは今、遺影の前に大事に置かれており、自身が棺に入るときには薬指にはめられる手はずが整っている。