西東京市の文化施設「こもれびホール」の「オーストリア音楽散歩」が注目を集めている。
これは、こもれびホール公式YouTubeチャンネルで視聴無料で鑑賞できるオンラインコンサート。
オーストリア在住のピアニスト山口友由実さんの演奏を聴きながら、音楽の都ウィーンの街をめぐる音楽散歩で、今年8月から配信が開始された「第一弾・夏 ウィーン国立歌劇場〜シューベルトの生家へ」は、ウィーン国立歌劇場からシューベルトの生家までの道のりを、ウイーン市立公園、ブルク公園など音楽にゆかりのある各所を巡りながら紹介している。シューベルトの美しい曲とともに美しいウィーンの景色を見ていると、あたかも海外旅行に行っているようなわくわくとした気持ちが味わえる。
また、15分の番組後半には、山口さんのピアノと高大善さんのチェロの演奏も収められた贅沢な内容となっている。
動画
コロナ禍の影響受け、新しい取り組み
同ホールと山口さんは、2013年7月にロビーコンサートに出演されてからの縁。当初は、今年7月に来日しての生コンサートを予定していたが、「コロナ」の影響により来日が叶わず、12月のオンラインコンサートに変更した。
山口さんは、日頃から曲の背景や作曲家のエピソードなどを伝えながら演奏をするレクチャーコンサートを開催されている。そこで、そのノウハウを生かし、オンラインコンサートに向けての「オーストリア音楽散歩」が生まれた。よりオンラインコンサートを楽しんでもらうと同時に、「コロナ」で沈みがちな人たちの気持ちが、少しでも明るくなればという思いが込められている。
動画の制作は山口さん自身が行ない、同ホールが配信を担当した。生配信も考えたが、時差等の関係で現在の形に落ち着いたという。
山口さんからは、
「世界中が『コロナ禍』の中、旅行やコンサートに行くこと、日常だったことが難しい日々が続いています。
オンラインコンサートではウィーンの雰囲気たっぷりに音楽をお届けし、事前講座ではウィーンの街を歩き、音楽家の軌跡を辿りながら、少しでも旅行気分を味わっていただけたらと思っております。
音楽で世界がつながりますように」
というメッセージが届けられている。
「オーストリア音楽散歩」の企画にあたり、同ホール事業課の芦田さんは、
「『コロナ』で気持ちが沈みがちですが、とにかくできることを考えようと前向きに取り組みました。この時期だからこそ音楽にできることがあると信じています」
と話す。
ご自身も大のクラシック音楽好きという芦田さん。
「音楽が身近にあるということを思い出してほしいです。
不要不急の観点から音楽を控えてしまう人がまだまだ多いですが、音楽は人を元気にしてくれます。明るい曲、悲しい曲、楽しい曲、どんなものでも力をくれ、歌詞などの言葉がない分、その時々の心の状況に寄り添ってくれます。15分の『音楽散歩』をきっかけにして、たくさんの人たちが前向きな気持ちになってくれることを願っています。旅行気分を味わいながら、ぜひ音楽に触れる時間を作ってください」
街歩きマップも配信
「オーストリア音楽散歩」は「街歩きマップ」を見ながら視聴を楽しめるので、いっそう旅行気分が味わえる内容になっている。(ダウンロードはこちら )なお、ダウンロードが難しい方は、同ホールでマップを配布している。 「第二弾・秋 セセッション〜シューマン縁の場所へ」は10月21日に公開予定。
◆山口友由実(やまぐち ゆうみ)
東京音楽大学大学院修了、ウィーン国立音楽大学大学院ピアノ室内楽科を満場一致の最優秀で修了。
テレビ朝日「題名のない音楽会」に独奏で出演。
2011年第18回ブラームス国際コンクールピアノ部門第3位を機に、ウィーン楽友協会でのリサイタルをはじめコンツェルトハウス、シューベルト生家、オーストリア国会議事堂、ペーター教会など、ウィーンを中心に各地で幅広く活動。
2016~2018年日本女子大学、和洋女子大学等で後進の指導にあたる。
2016年発売のデビューCD「謝肉祭~音列の風景たち~」はレコード芸術誌上で準特選盤
http://www.yuumi-yamaguchi.com/
(取材記者・三好圭子)