自分史の書き方[7] 取材の仕方

前回は、書き始める前に材料を集めることが大切だと紹介した。では、それをどのように集めるのか。今回は「取材」についてまとめる。

さて、材料集めの段階となった。いわゆる「取材」を行うわけだが、別に構える必要はない。

「取材」なる単語はニュース番組やドラマなどで重々しく使われる傾向があり、何か特別な響きがあるが、実際にやっていることはさほど大それたことではない。

取材の方法は、大きく3つに分けられる。

一つは記録に当たること。もう一つは、現場を訪ねること。そしてもう一つは、人に話を聞くということだ。

自分史に当てはめた場合、記録に該当するのは、写真、日記、手紙などになる。自分が書いたものだけを見返すのか、あるいは、家族や友人の書いたものにまで当たるのかは、どういうものを書き残したいのかによる。

次に現場を訪ねることだが、これはかつて暮らした家や地域、勤めた職場、思い出の場所などをめぐることになる。むろん歳月のなかで風景は様変わりしていることだろうが、現場に立って初めて思い出すことや気付くことがある。「どうせ景色は変わっている」などと軽んじてはいけない。出掛けてみると、ばったりかつての友人に出会うなど、思わぬ縁がつながることもある。

インタビューの肝

前述の2つは、どちらを先に行ってもよい。ただ、3つめとなる「人に聞く」は、基本的には前述2つの後に行う取材となる。その理由を記す前に、インタビューで何を聞くのかについて語ろう。

実際のセミナーでは、私はその場で参加者へのインタビューをしてみせるのだが、例えば以下のような簡単なことを聞く。

「どこから来ました?」

「歩き? 車ですか?」

「雨で大変だったでしょう?」

「自分史を作ることについては、どう思っていますか?」

適当に質問しているように思うだろうが、ここで私は意識的に2種類の質問を行っている。そして実はインタビューとは、この2種類を繰り返すことでしかない。

前半の2つの質問は、「事実の確認」を行っている。そして後半2つは、どう感じていたのか、何を考えているのか、という主観を尋ねている。

事実を確認し、それについてどう思っているのかを聞く。基本的にインタビューは、この繰り返しになる。専門的にはこれを「2つのF」などという。Fact(事実)とFeeling(感情)の頭文字を取ったものだ。ともあれ、質問はこの2種類に分けられると知っていると、質問を整理して組み立てることができる。

――と、ここまで説明すれば、先ほどの問いの答えは明らかだろう。

記録に当たれるものは先に自分で調べておき、ある程度事実をそろえたうえでインタビューを行うほうが、その中身は濃いものになる。その場で「あれはどうだっけ?」と事実確認するのは時間が惜しい。「日記にこうあったのだけど、どう思う?」などと聞くほうが有意義だ。

自分史においてのインタビュー相手は、基本的には家族や友人になる。ぜひ気軽に「取材」をしてみてほしい。

(文/「タウン通信」代表・谷隆一)


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谷 隆一

「タウン通信」代表。多摩北部にて、2008年から「タウン通信」を発行。
著書に、『中高生からの選挙入門』(ぺりかん社)、『議会は踊る、されど進む~民主主義の崩壊と再生』(ころから)ほか。
当コラムは、地域情報紙「タウン通信」で掲載した原稿を転載したもの。

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