玉川上水をまたぐ形で計画されている都道「小平3・2・8号線」の建設を進める前に現地調査をしてほしい――10年前にその建設の是非を巡って住民投票も行われた幅員36メートルの都道の着工が現実味を帯びるなか、生物多様性や史跡として貴重なこのエリアを失うことは都にとっても大きな損失になるのではという観点から、生物の調査などを求める署名運動が5月から行われている(2024年)。署名は9月30日時点で2万8572筆に達している。

都道建設を前に、市民が運動
署名活動の呼びかけをしているのは、ちむくい(ちいさな虫や草やいきものたちを支える会)の代表・リー智子さん、理学博士で玉川上水みどりといきもの会議の代表・高槻成紀さん、「グレートジャーニー」で知られる探検家で地球永住計画の代表・関野吉晴さん。
署名用紙に書かれている「都知事への要望」は、「『景観基本軸』と『東京都生物多様性地域戦略』にのっとった玉川上水の調査をしてください」など3点。都道の建設に真っ向から反対するのではなく、玉川上水が史跡として貴重であり、いかに生物の宝庫となっているのかを知ってほしい、と訴えている。

「生物の宝庫の消失は人間社会の危機につながる」
高槻さんによると、玉川上水の雑木林の中には84種に及ぶ鳥類が確認されているという。これは皇居周辺の86種類に匹敵する数で、玉川上水に貴重な生態系があることが分かる。
リーさんも「貴重な昆虫も観測されており、玉川上水は生物の逃げ場となっています。都市化した地域の中の緑地であり、市民の憩いの場としても大切な場所です」と続ける。
都では事業の効果として「交通が円滑化」することを挙げているが、リーさんは「私も車に乗るので便利になるのは分かる」と前置きしたうえでこう話す。
「玉川上水は東京の真ん中を唯一山から都心に向けて流れており、生き物達の通り道、都心の生態系を支えています。生態系は一度壊れてしまうと再生できないので、丁寧な調査を求めています。空気、水、食べ物、涼しさ、安らぎなどを与えてくれる生き物がいないと人は生きていけません。その価値を総合的に評価してほしいです」
署名は今年中に都に提出する予定。なお、引き続き署名を受け付けている。詳細はリーさん(satoko.lee@gmail.com)へ。
【「小平3・2・8号線」を巡る経緯】
建設の是非を巡って2013年、都で初の直接請求による住民投票が実施されたが、成立要件として設定された投票率50%に達しなかったため、「不成立」として5万1010票が開票されずに破棄された。その開示を求める訴訟も起こされたが、原告の訴えは退けられた。
【リンク】
◎ちむくい(ちいさな虫や草やいきものたちを支える会、署名運動詳細など)