ネーミングライツ

正直に告白をすると、最初に記者会見で話を聞いたときには「ふーん、面白いことを考えたな」と思った。市民文化会館である西東京市保谷こもれびホールにネーミングライツを適用するという件だ。

しかしこうして実際に「タクトホームこもれびGRAFAREホール」という名前が付いたのを見て、少々戸惑っている。基本的には応援したいのだが、課題が残ったのでは? という思いを捨て去ることができない。

最初に思うのは、そもそも地域の利用者が大半という市民文化ホールにネーミングライツはそぐわなかったのではないか、ということだ。日産スタジアムだのベルーナドームだのなら、興行の場として分からなくもない。が、市民の文化活動の拠点となるホールに、民間1社の名前が付くことは適切なのだろうか。

近隣市で前例があるのは承知しているが、問題は「自分たちのホール」と思えなくなる恐れがあることだろう。とりわけ転入者は、最初からそれを公共施設と認識しない可能性もある。

次に、長いネーミングへの違和感を隠せない。募集時に市は「こもれび」の文字を残すことを条件に挙げていたのだが、それがマイナスに働いたように見えてならない。むしろ条件で入れるなら、地名のほうではなかったか。名称だけではどこにあるホールかピンと来ず、それもまた、市民が「自分たちのホール」と思えなくなる恐れをはらんでいる。

もちろん、「こもれびホール」として親しまれてきた歴史を大切にしたいという思いは尊いものだ。だが、それならばなお、もう少しうまく「こもれび」の文言を配置できなかったのだろうか。

――と小言を申すのも、さっそく近場から「どう呼べばいいのかな?」のささやきが聞こえてくるからだ。愛称が広まるかどうかは、心理的な近さのバロメーターともいえる。今後、新名称がどう地域に根付くか、注視していきたい。

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谷 隆一

「タウン通信」代表。多摩北部にて、2008年から「タウン通信」を発行。
著書に、『中高生からの選挙入門』(ぺりかん社)、『議会は踊る、されど進む~民主主義の崩壊と再生』(ころから)ほか。
当コラムは、地域情報紙「タウン通信」で掲載した原稿を転載したもの。

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