96年間、生徒が毎日の昼食を手作り
生徒が昼食を手作りするという教育を開校以来96年間続けている自由学園(東久留米市)の「伝統のレシピ」が、このほど、卒業生の手によって一冊の本にまとめられました。
同校では、「生活即教育」を理念に、キャンパス内で「食の循環」をするという教育を行っており、その一環として、料理にも力を入れています。
その調理現場を覗いてみました――。
女子部では毎日昼食を作っている
先頃発行された『自由学園最高の「お食事」~95年間の伝統レシピ』(新潮社)は、「自由学園のレシピを多くの人に知ってほしい」と卒業生が編集チームを作って作成したものです。同校の協力で実施された卒業生へのアンケートをもとに「人気メニューベスト5」を掲載するなど、独自性の強いレシピ本となっています。
レシピのベースとなっているのは、同校女子部の生徒の手で毎日作られている昼食です。
40人で、640人分を作る
「タマネギのカットは私がやるね」
「手が空いたら、流しの消毒をよろしく!」
少女たちが小気味よく調理室を動き回っています。
* * *
訪ねたのは、さる4月13日。昼食を囲んでの新入生歓迎会が開かれる日で、女子部高等科2年生・約40人が、教職員の分も合わせた全校640人分の食事を作ることになっていました。
歓迎会の主なメニューは、ポークローフきのこソース、フライドポテト、人参グラッセ、ピーマンふり味、蕪・胡瓜・はつか大根のサラダ、パン、苺ショートケーキというもの。学内の工房で焼かれるパン以外は、材料を刻むところからすべてを生徒たちが料理しました。
揚げ物、オーブン料理など本格的に
同校では普段から、生徒が昼食を料理しています。
特に女子部は、「高2が木曜担当」という具合に、学年別で中1~高2が月~土を日替わりで担当しており、毎日が生徒の手作り。料理の内容は学年を追うごとに高度になり、高校生にもなると、揚げ物やオーブン料理など、火気も存分に使います。
この日は、普段よりも提供数が多いということもあり、1カ月以上前から準備を進めてきました。リーダーに選ばれた藤田明日香さんは、「作り方を何度も確認し、担当者や進行を模造紙に書き出すなどしてきました。みんなが臨機応変に動いてくれたので時間通りに仕上げられました」と振り返ります。
歓迎会でも料理は好評で、ベテランの教職員からは「今日のは出来がいいですね」「高2の料理なので、楽しみに来ました」などの声が聞かれました。
キャンパス内で「食」の循環も
自由学園では、「育てる」「整える」「味わう」「始末する」を校内で実践する教育をしており、キャンパスで農作物を作ったり、ニジマスやブタの飼育などをしています。
また、残飯は、落ち葉と合わせて堆肥にするなど、「食の循環」が体感できる取り組みが続けられています。
この中でも特に「料理」には伝統があり、開校当初は、創立者・羽仁吉一・もと子夫妻の家の台所を使って、生徒たちが昼食を作っていたそうです。
同校広報担当の椚田結子さんは、「料理には、想像力や協調性、自主性などを育む面もあり、中学生、高校生には有意義な教育と思います」と話します。
出版を受けて同校の高橋和也学園長は「代々の先生と生徒たちが作り上げてきたものがあってこその本。私たちの取り組みを多くの人に知ってもらう機会になれば」と話しています。
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同書は、B5判、96ページ、1404円。全国書店・ネット書店で販売中です。