【この町この人】映画監督・にじメディア共同代表 齋藤一男さん

「映像」で求める共生社会

障害の有無に関係なく「『得意』と『好き』」で地域貢献しようというワークショップを、今月末から主催する。映像制作やアート作品の創作を通してさまざまな人たちが交流することを意図する企画で、「小さな集まりで、インクルーシブ(共生社会)を実現したい」と参加者を募っている。発案のベースにあるのは、自分自身が感じている生きづらさ。そして、「全ての人を置き去りにしたくない」という思いだ。

大学で国際関係を学んでいた頃に、芸術志向の映画に夢中になった。燃える思いで映像の世界に飛び込み、ドラマなどを撮影して20代を送った。

が、いつからか、仕事に葛藤を抱えるように……。

「要領よく立ち回れる人が優遇されていく。でも、僕自身は、そうでない人たちのほうに魅力を感じていたのです」

効率優先の現場に嫌気が差し、独立。結婚後は、映像と並行して、障害者福祉の仕事に関わるようになった。

そこで出会った知的障害者たちに目を見開かれた。突飛な行動をしたり、思いもしない反応をしたり。「個性的で、魅力しかなかった。映画監督としても、創作意欲を大いに掻き立てられました」

以来、自閉症の男性を主役にした映画(「はたらく」)や、自閉症の兄弟のドキュメンタリー(「そらくんとたからくん」)などを制作してきている。撮影をしながら抱いたのは、「制作は彼らを中心にして進む。自分が必要とされる体験を通して、自己肯定感を育んでもらえるのではないか」という期待感。そして、ずっと続けてきた映像で人の役に立てるという実感だった。

「人間の個性は、他人がその人をどう捉えるかで変わる。例えばゆっくりのペースの人を非効率的と見るのではなく、人に癒やしを与える存在と捉えられたなら、希望ある社会になるはずと思います」

その思いを具現化しようと、4年前に「にじメディア」という映像メディアを立ち上げた。映像を作るだけでなく、ワークショップも行う。将来的には、福祉や教育の事業も視野に入れている。

「インクルーシブ実現のためのほんの小さな一歩です。映像の時代なのだし、もっと商業的にやるべきなのでしょうけど、効率良くやるのが苦手なんですよ。僕も」

さいとう・かずお 1974年、千葉県生まれ。映画監督、プロデューサー、にじメディア制作委員会共同代表、ロゴスフィルム代表。東久留米市など北多摩エリアの障害者支援団体とも連携している。

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