8月25日、国立競技場で早慶戦
西東京市東伏見にあるグラウンド(東伏見キャンパス)で日々の練習や公式戦を行っている「早稲田大学ア式蹴球部」が、創部100周年を迎えている。その節目を記念し、今年の慶応義塾大学との定期戦は、25日㈰に、11年ぶりに国立競技場で開催される。決戦を前にした同学蹴球部を訪ねた。
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東伏見駅南口からの緩やかな坂を下って、3分。木々に囲まれた奥にグラウンドが広がる。気温30度を超える猛暑のなか、練習とは思えぬ迫力で選手たちがボールを奪い合っていた。

早稲田大学の〝サッカー部〟は、正式名称をア式蹴球部という。
創部は1924年。当時、サッカーという言葉は一般的ではなく、アソシエーション・フットボールに由来して「ア式蹴球部」となった。
ちなみに、慶応義塾大学の〝サッカー部〟は「慶應義塾体育会ソッカー部」が正式名称だ。誤植ではない。
現在は関東大学サッカーリーグ2部に所属する早稲田だが、その歴史は栄光に彩られている。
関東大学リーグでは初代王者を皮切りに最多となる27回の優勝を飾っており、全国タイトルは天皇杯3回を含む30回を数える。
輩出した選手も錚々たる面々で、Jリーグ初代チェアマンの川淵三郎さん、日本代表最多得点記録保持者の釜本邦茂さん、日本代表監督を務めた岡田武史さん・西野朗さんなど枚挙にいとまがない。現日本代表では相馬勇紀選手もOBの一人だ。
東伏見で90年超
大学の枠を超え、日本サッカー界を牽引してきた早大ア式蹴球部が東伏見を拠点としたのは1930(昭和5)年のこと。
以降、地域に溶け込み、現在でも近隣小学校でサッカー教室を開くなど社会貢献活動を行っている。
100代目主将の伊勢航選手は「東伏見でよく行く飲食店もあり、個人的に気にかけていただいている方もいる。町の方々の温かさを感じます」と話す。
また、昨年就任した兵藤慎剛監督も同部に在籍した一人で、プロ生活を経て監督に就任した折には、「帰ってきたな」と感慨深かったという。
「人生の中で『帰ってきた』と思える所はそうはない。大切な場所です」
と、長崎県の出身ながら、学生時代を過ごした町への愛着を口にする。

気持ちの激突
そんな名門校には、伝統的な行事が幾つかある。
その代表例が、慶応義塾大学との定期戦だ。
リーグ戦とは別に、学生が主管する対抗戦で、「早慶クラシコ」とも呼ばれている。
毎回1万人以上の観客を集める、大学サッカーではビッグイベントだ。蛇足ながら、1950年の初回開催が、国内サッカーでの初のナイトゲームだった。
早慶戦というのはやはり特別なものだそうで、兵藤監督は「私が学生の頃は圧倒的に早稲田が強い時期だったが、技術とは違う目に見えない力でぶつかってこられて苦戦した。結局4年間で2勝2分でした」と、気持ちのぶつかり合いになったことを振り返る。
実は現状は、両学とも同じリーグに所属。慶應が暫定1位、早稲田は7位だ(7月28日時点)。
「リーグでは追いかける立場。挑戦者として思い切りぶつかりたい」と伊勢主将は意気込む。
なお、節目を意識して国立競技場での開催にこだわったが、経費がかさむため、クラウドファンディングでの寄付を募っている。返礼品には、ピッチサイドシートや100周年記念Tシャツなどが用意されている。
実行委員で、同部マネジャーの永戸彩花さんは「プロになっていく選手を身近で見られるのが大学サッカーの魅力。その最大規模のゲームをぜひ地元の方に見ていただきたいです」と話している。
早慶クラシコは25日㈰午後6時から。一般自由席2000円ほか。イープラスで販売中。詳細は同部(wmw@mvg.biglobe.ne.jp)へ。
※編集部注 試合は終了していますが、地域情報として掲載を継続しています