書籍『装いの翼』

1面記事に関連し、少し補足しておきたい。

もともとこの企画展の取材は、書籍を岩波書店の編集の方(この近隣にお住まい)からご寄贈いただいたのがきっかけなのだが、正直言って、当初はあまり関心を持たなかった。副題に「おしゃれ」とあることから、ファッションに疎い自分には無縁に思えたし、薄紫の洒落た表紙から女性が好みそうな内容だろうと勝手に推測した。今さらだが、そのようにして初動が遅れたことを皆さんにお詫びしたい。企画展の会期からして、もっと早く記事掲載するべきだった。

初動が遅れたのは、会場のちひろ美術館・東京が本紙の配布エリア外だというのもある。いかに茨木のり子さんが西東京市に長く暮らした方とはいえ、地域ゆかりの方の関連企画を追いかけ出したらキリがない。そんなワケでもたもたしていたのだが、とある週末に本を読み、「これは取材せねば!」と目を見開かされる思いをした。

一言でいえば、月並みだが、感動した、ということに尽きる。恥ずかしながら、いわさきちひろさんの波乱万丈な人生も、岡上淑子さんについてはそのお名前すらも存じていなかった。茨木のり子さんについては、多少の知識があったので発見は多くはないが、最後のエピソードにガツンとやられた。ネタばれだが書いてしまおう。亡くなる少し前のこと、親しくしていた親族との会話でもうすぐ80歳になることに触れ、「私、頑張っているでしょう? でも、誰も褒めてくれないの」と言ったという。

子どものいない茨木さんは48歳で夫を亡くし、約30年、東伏見で独り暮らしをしている。寂しかっただろうね。代表作「自分の感受性くらい」は夫の死後の発表だが、あの「ぱさぱさに乾いてゆく心」の書き出しには、深い孤独感が投影されているのかもしれない。

茨木さんは、そうした崩れそうになる心を、きちんと生活を送ることで支えようとしたのではないか。

「装い」「おしゃれ」を入口に、作家たちの生活者としての側面に迫った良書。著者の視点、スタンスが絶妙。お世辞抜きで、オススメの本です。

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谷 隆一

「タウン通信」代表。多摩北部にて、2008年から「タウン通信」を発行。
著書に、『中高生からの選挙入門』(ぺりかん社)、『議会は踊る、されど進む~民主主義の崩壊と再生』(ころから)ほか。
当コラムは、地域情報紙「タウン通信」で掲載した原稿を転載したもの。

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