伊藤明彦さんのドラマ

世界中で紛争が起きているなか、戦後80年ということで、この夏は戦争・平和をテーマにした企画が目立つ。「タウン通信」でも、地域の中のそうした動きを紹介してきている。

さて、この欄でもう一つ紹介したいのが、8月13日㈬午後10時からNHKで放送予定のドラマ「八月の声を運ぶ男」についてだ。

8年をかけて被爆者1003人の体験談を録音したジャーナリスト・伊藤明彦さんの実話に基づくドラマで、本木雅弘さんが演じる。

伊藤さんには、20年ほど前にインタビューしたことがある。西東京市に本社があるシチズン時計による「シチズン・オブ・ザ・イヤー」を受賞された直後のことで、当時、伊藤さんは同市向台町のUR賃貸住宅に住んでいた。当地との縁は「抽選で当たったから、たまたま」というもので、しばらくして他市に移り、亡くなられた。機会があり、転居後も一度、手紙を頂いたことがある。

住まいについて触れたのにはワケがある。取材で訪ねたその居室は2DKの広さがあったが、室内にはイス一つなく、書籍の詰まった本棚のほかは、2合炊きの使いこまれた炊飯器があるだけだった。炊飯器は床に無造作に置かれていて、その横に座布団に座って話をお聞かせいただいた。座卓もなかった。贅沢を一切排除し、取材に人生の全てを注いでこられたことが痛いほどに感じられる部屋だった。伊藤さんは勤めていた長崎放送を辞め、日中を空けるために、早朝・深夜のアルバイトを続けながら被爆者を訪ね歩いている。とうてい真似できないと思った。

ドラマでどう描かれるか分からないが、もしご覧になるなら、そんな部屋をイメージしながら見てみてほしい。なお、伊藤さんは約600万円を負担してテープを複製し、1万3660本を全国の図書館などに寄贈している。当時の記事を当社ウェブサイトに掲載しておくので、併せてご覧いただければ。

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谷 隆一

「タウン通信」代表。多摩北部にて、2008年から「タウン通信」を発行。
著書に、『中高生からの選挙入門』(ぺりかん社)、『議会は踊る、されど進む~民主主義の崩壊と再生』(ころから)ほか。
当コラムは、地域情報紙「タウン通信」で掲載した原稿を転載したもの。

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