複数の工務店から「今年は住宅リフォームがお得」の声が聞こえてきた。理由を調べていくと、見えてきたのは、国が行う「住宅省エネ2025キャンペーン」だ。工事の内容によっては、最大で200万円もの補助金が出る大型キャンペーンが行われている。項目、対象がやや複雑なので、以下に整理した。

- 【主な目次】
- キャンペーンの背景~2050年までに「温室効果ガスの排出量を実質ゼロ」を目指す
- 新築・既存住宅など項目別に6つのキャンペーン
- 子育て中でなくてもOKの「子育てグリーン住宅支援事業」
- エネファームなら最大36万円の補助の可能性も 「給湯省エネ2025事業」
- 今年の目玉 「先進的窓リノベ2025」
- 予算上限に達する前に、早めに申請を
- 申請は事業者が代行 登録事業者への依頼を
(※この記事にはプロモーションが含まれています)
2050年までに「温室効果ガスの排出量を実質ゼロ」目指す
まずは堅苦しいが、キャンペーンの理由から。理由が分かれば、最大200万円もの補助金が出ることに納得できる。何しろ税金を活用しているのだから。
納税者としてはその必要性をしっかりと見極め、趣旨に賛同して、堂々とキャンペーンを利用していきたいところだ。
というわけで、キャンペーンの趣旨だが、一言でいえば「GXの一環」ということになる。
GXは、温室効果ガスの排出量削減と経済成長を両立する社会変革への取り組みのごとで、「グリーントランスフォーメーション」の略。
日本は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指しており、2030年度に2013年度比で46%減にすることを中間の目標値として掲げている。
そのためには、国民全体の削減努力が必要で、日々の生活の中での省エネはキーポイントの一つ。
家庭内でのエネルギー消費の多い機器は、順に、▼冷蔵庫や洗濯機などを動かす「動力」と照明、▼給湯、▼暖房、▼厨房、▼冷房となっており、これらで省エネ機器を用いることが重要になってくる(経済産業省資源エネルギー庁、2018年度データ)。
従って国としては、省エネ機器の促進、断熱効果の高い住まいの増進に本腰になっているというわけだ。

新築・既存住宅など項目別に6つのキャンペーン
具体的に「住宅省エネ2025キャンペーン」を見てみよう。
キャンペーンは大きく4つあるが、カテゴリーで分けると以下のように整理できる。
【新築住宅が対象】
- 子育てグリーン住宅支援事業
- 給湯省エネ2025事業
【既存住宅が対象】
- 子育てグリーン住宅支援事業
- 給湯省エネ2025事業
- 先進的窓リノベ2025事業
- 賃貸集合給湯省エネ2025事業
このうち、最下部の「賃貸集合給湯省エネ2025事業」はアパート、マンションなどの賃貸住宅を所有しているオーナー向けのものなので、この記事では詳細には触れない。
これを除くと、上記を別の形で整理して、
・子育てグリーン住宅支援事業
・給湯省エネ2025事業
・先進的窓リノベ2025事業
の3つがあるともいえる。
「子育て~」と「給湯省エネ~」は新築・既存住宅ともに対象、「先進的窓リノベ」のみ既存住宅だけが対象ということだ。
新築の場合は、事業者主導で工事が進むケースが多いと思われるので、この記事では、既存住宅のリフォームのみにフォーカスして個別に紹介していくことにする。
なお、既存住宅にはマンションなどの集合住宅も含まれるので、念のため付記しておく。

子育て中でなくてもOKの「子育てグリーン住宅支援事業」
まずは、国土交通省が管轄する「子育てグリーン住宅支援事業」から。
正直言って、この事業は結構ややこしい。
そもそも、事業名称が「子育てグリーン住宅支援」だが、リフォームにおいては子育てに関係なく対象となる。案内されている対象は、▼住宅を所有し、居住する個人またはその家族、▼住宅を所有し、賃貸に供する個人または法人、▼貸借人、▼共同住宅等の管理組合・管理組合法人、というもので、要は、その住宅に対しての権利者。その住宅に子どもがいなくてもOKだ。

対象となるリフォーム工事も複雑だ。
というのも、対象になるには、「必須工事」から2つ以上を行うことが大前提となる。そのうえで、5つのカテゴリーがある「任意工事」を組み合わせられるのだが、ややこしいので、まずは必須工事から整理しよう。

3カテゴリーの必須工事から2つ以上が大前提
必須工事には、以下の3カテゴリーがある。
①開口部の断熱改修
②躯体の断熱改修
③エコ住宅設備の設置
この3つのカテゴリーの中から、2カテゴリー以上の工事を必ず行うことが条件になり、もし3カテゴリーすべての工事を実施したなら、最大で60万円の補助金が出る。補助の前提条件となる2カテゴリーなら、最大で40万円の補助だ。
では、それぞれのカテゴリーにどんな工事が含まれるのか気になるところだが、概略だけ以下に整理しておく。
(※リフォームする製品の性能によって補助額が異なるケースがあるが、その詳細はかなり複雑なので、依頼時に直接業者に尋ねることをお勧めしたい)

開口部の断熱改修
【①開口部の断熱改修】
- ガラス交換:既存窓を利用して複層ガラスなどに交換するもの
- 内窓設置:既存窓の内側に、新たに窓を新設するもの
- 外窓交換:既存窓を取り除き、新たな窓に交換するもの(または新たに窓を設置)
- ドア交換:既存のドアを取り除き、新たなドアに交換するもの(または新たにドアを設置)
なお、これもまたややこしい紹介になるのだが、この工事内容は下記で紹介する「先進的窓リノベ2025事業」と重複しており、「先進的窓リノベ」の交付決定を受けている場合は、「子育てグリーン住宅支援事業」における必須工事の1カテゴリーを実施したものとみなすことができる。
要するに、「子育てグリーン住宅支援事業」と「先進的窓リノベ2025事業」を併用して、補助金申請ができるということだ。
まさしく今リフォームするなら、この工事はぜひ取り入れたいところとなるが、要注意なのは、先に「子育てグリーン住宅支援事業」で補助金を受け取ってしまうこと。交換する製品の性能によっては「先進的窓リノベ2025事業」のほうがより高い補助を受けられる可能性があるが、同一工事に対して2つの補助金を得ることはできないので、申請時はその順番にくれぐれもご注意を。
上記の「併用」は、あくまでも、「先進的窓リノベ2025事業」で補助対象になった工事を、「子育てグリーン住宅支援事業」での必須工事を行ったものと認定できるという意味なので、勘違いで損をすることがないように気を付けてほしい。
ちなみに、これと類似の条件が、下記の「エコ住宅設備の設置」でも登場するので、ご留意を。

躯体の断熱改修
【②躯体の断熱改修】
・外壁、屋根・天井、床などに一定の使用料以上の断熱材を設置
グラスウール断熱材などを住宅に施すもので、設置する材質の性能、量によって補助額が異なる。
躯体に関わる工事なので大規模改修になりがちだが、寒暖差が小さく快適な空間になることに加え、冷暖房効率が高まり、光熱費のランニングコストに好影響を及ぼす期待ができる。
エコ住宅設備の設置
【③エコ住宅設備の設置】
- 太陽熱利用システム:太陽熱を利用して温水や温風を作るシステム。太陽光発電とは異なるので要注意
- 節水型トイレ
- 高断熱浴槽
- 高効率給湯器:エコキュート、エコジョーズ、エコフィール、ハイブリッド給湯機
- 節湯水栓
- 蓄電池
この項目においては補助金の規定が明確なので、比較的分かりやすい。高断熱浴槽なら3万2000円、節水型トイレで掃除しやすい機能を有するものなら1台あたり2万3000円、など。
なお、上記のうち、高効率給湯器の設置については「給湯省エネ2025事業」のほうがより高い補助を受けられるケースがある。①開口部の断熱改修と同様、「給湯省エネ2025事業」の交付決定を受けている場合は、「子育てグリーン住宅支援事業」の必須工事「エコ住宅設備の設置」を行ったものとして扱われるので、申請の場合は、手続きの順番などご注意を。

改めて、組み合わせについて確認
さて、上記が「必須工事」になるわけだが、念のため、申請の仕方をまとめておこう。
すでに把握された方には釈迦に説法となるが、補助金を得るための申請としては、上記の3つのカテゴリーのうち、2カテゴリー(以上)の工事を行う必要がある。工事内容の組み合わせは自由だ。
例えば…、
①「開口部~」のうちの「ドア交換」と、③「エコ住宅設備~」のうちの「節水型トイレ」への交換、の2カ所のリフォームで、補助申請する資格を得たということになる。
組み合わせは自由なので、「ガラス交換」と「エコジョーズの設置」や、「外窓設置」と「躯体の断熱改修」など、ニーズと予算に応じて選定を。
さらに、任意工事に補助金
さて、ここまででも結構ややこしい「子育てグリーン住宅支援事業」だが、さらに「任意工事」というものがある。うまく使えば得するものなので、もう少し読み進めてみてほしい。
「任意工事」は、上記の「必須工事」から2カテゴリーの工事を行ったうえで、プラスアルファで補助金申請できるもの。
- 子育て対応改修
- 防災性向上改修
- バリアフリー改修
- 空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置
- リフォーム瑕疵保険等への加入
の5カテゴリーがある。
対象項目がかなり幅広いので、「このリフォームはやりたいと思っていた」という項目がある可能性は高い。任意工事においてはカテゴリーはさほど重要ではないので、以下、対象項目を列挙する。
- ビルトイン食洗器:組込型のみ対象
- 掃除しやすいレンジフード
- ビルトイン自動調理対応コンロ:組込型のみ対象
- 浴室乾燥機
- 宅配ボックス
- 窓、ドア:防犯性の高いもの
- 窓、ドア:既存のサッシに内窓を設置して二重窓とするもの
- 複層ガラス
- システムキッチン:キッチン用シンク、調理台、コンロ、調理室用の換気設備を有するもの
- 防災性の高い窓
- 手すりの設置:便所、浴室、脱衣室、等
- 段差解消:同上
- 廊下幅等の拡張:介助用の車いすで用意に移動できる幅
- 衝撃緩和畳の設置
- 空気清浄機能・換気機能付きエアコン
これらの設置には、それぞれ補助金が出る。例えば、ビルトイン食洗器に対して2万5000円、宅配ボックスに対して1万1000円など。
なお、最後にもう一つ注意点。
前述の通り、最大で60万円もの補助金が出る魅力的な事業だが、施工への補助額が5万円以上でないと対象にならないので、発注の際は試算をお忘れなく。
ここで強調したいのは、「施工額が5万円ではなく、補助額が5万円以上」ということ。基本的には、必須工事だけでこの条件はクリアするはずだが、「聞いてないよ~」とならないように、念のため補足しておく。
いずれにしても、信頼できるリフォーム会社に相談することをお勧めしたい。
(リフォーム会社を比較するなら➡どんなリフォーム工事も可能|リフォーム比較プロ)
【リンク】◎子育てグリーン住宅支援事業
エネファームなら最大36万円の補助の可能性も 「給湯省エネ2025事業」
さて、「子育てグリーン住宅支援事業」は一段落して、もう一つのキャンペーン「給湯省エネ2025事業」について。
こちらは高効率給湯器の設置に対して補助金が出るもので、前述した「新築/既存住宅」の区分とは別に、「購入・工事」か「リース利用」かの対象別もある。
家庭においては「購入・工事」が一般的なので、この記事では、戸建てやマンションに住む方が高効率給湯器を購入・設置するケースを前提に、以下まとめる。

まずは、高効率給湯器について整理しよう。
高効率給湯器とは、一般普及するガス給湯器に比べて省エネ・高効率に熱湯を作る給湯器で、今回の対象としては、具体的に、
- エコキュート:ヒートポンプ給湯器(※補助額は1台6万円~)
- ハイブリッド給湯器:電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯器(※同8万円~)
- エネファーム:家庭用燃料電池(同16万円~)
がリストアップされている。
いずれも、戸建て住宅ならいずれか2台まで、共同住宅などならいずれか1台までが補助対象となっている。
上記に補助額の目安を記載しているが、それぞれ加算要件があり、例えば、エコキュートでより省エネ性能の高いタイプの導入ならプラス6万円などが適用してもらえる。
さらに、現在設置されている機器の撤去料が加算されるケースも。撤去加算については、対象が「電気蓄熱暖房機」および「電気温水器」と指定されているため対象者は絞られるかもしれないが、机上の合算では、エネファームの設置時に最大で36万円の補助を受けることができる。

エコキュート、エネファームとは?
ところで、それぞれの機器の解説も必要だろう。
エコキュートは、夜間の電力や太陽光で発電した電力でお湯を沸かし、貯湯タンクに蓄えておくシステム。安価な電気を活用するシステムで、ランニングコストを抑えられるメリットがある。また、一定量のお湯をためているので、災害時に役立つ期待もできる。
利点は多いが、新規に導入する場合は、電気代の契約を確かめておくことをお勧めする。現状の契約のままでは電気料金の面でメリットを見いだせない場合は、電気の契約の見直しも必要だ。
「ハイブリッド給湯器」は、エコキュートのシステムと、高効率ガス給湯器のシステムを組み合わせた給湯システム。メーカーにもよるが、一日の中でのお湯の使用量などを学習して効率的に作動することで、電気代・ガス代を大幅に節約する。こちらも貯留のシステムなので、災害時に役立つ期待もできる。
特に、温水暖房などを取り入れている場合は、高効率の給湯システムはぜひ活用したいところだ。
これら2つの熱湯を作るシステムに対して、エネファームは少しスタンスが異なる。「エネルギー」と「ファーム(農場)」を組み合わせた名称というエネファームは、その名の通り、我が家でエネルギー(電気)を作り出すシステム。
都市ガスなどから取り出した水素と空気中の酸素を化学反応させて電気を作り出すとのことで、発生した電気を家庭内で利用。その際の排熱で、お湯を沸かすことができる。作られた熱湯は、上記2つのシステム同様、貯留タンクにためておかれ、入浴や炊事の際にいつでも利用できる。
太陽光発電と組み合わせると、発電量に余裕が生まれ、売電も可能に。
どのシステムが合っているかは、生活の仕方や住まいの人数、規模などにもよる。また、これらのシステムは、現在の電気契約との兼ね合いも重要だ。システムを変えただけではメリットが出ないケースもあるので、できれば、詳しいプロに相談して進めていきたい。
なお、繰り返しになるが、この交付は、「子育てグリーン住宅支援事業」の必須工事の認定にもなるので、予算に余裕があるなら併用したい。
【リンク】◎給湯省エネ2025事業
今年の目玉 「先進的窓リノベ2025」
先進的窓リノベは、最大で一戸当たり200万円の補助金が出る大型キャンペーン。
補助対象工事は、
- ガラス交換
- 内窓設置
- 外窓交換
- ドア交換
の4つ。いずれも、複層ガラスなど断熱性のあるものが対象となっている。

複層ガラスは、既存窓のガラス枠に2枚のガラスを並行して設置するもの。内窓・外窓は文字通り既存の窓の内側・外側に新たに窓を設置(あるいは改築)するもので、これらの効果としては、断熱や防音、防犯などがある。実際の生活上では、結露対策などにも有効だ。
既述ではあるが、断熱効果を高くすると、家屋内の寒暖差が小さくなり、過ごしやすくなる。冷暖房の効果も高く、光熱費を抑えられるのも見逃せない。
補助の金額については、ガラスのサイズや枚数などで異なるので、信頼できるリフォーム業者と相談しながら進めると良いだろう。
なお、「給湯省エネ」の末尾にも記載したことだが、この交付は、「子育てグリーン住宅支援事業」の必須工事の認定にもなるので、予算に余裕があるなら併用をお勧めする。
【リンク】◎先進的窓リノベ2025事業

予算上限に達する前に、早めに申請を
このような大規模の省エネキャンペーンだが、補助金には予算額があるのでご注意を。
どの事業も数百億円規模で予算が組まれているが、上限に達したところで補助金事業は終了となる。
なお、すでに工事終了のものも対象になる場合がある。目安として、下記がそれぞれの対象期間。
◎子育てグリーン住宅支援事業:2024円11月22日以降の着工から。交付申請は遅くとも2025年12月31日まで
◎給湯省エネ2025事業:2024円11月22日以降の着工から。交付申請は遅くとも2025年11月14日まで
◎先進的窓リノベ2025事業:2024円11月22日以降の着工から。交付申請は遅くとも2025年12月31日まで
申請は事業者が代行 登録事業者への依頼を
最後に、施工において重要な点を一つ。
この事業はいずれも申請を施工事業者が代行して行う仕組みになっている。申請できるのは、事前に登録している事業者のみになるので、補助金を利用してリフォームしたいなら、依頼先の工務店が登録業者かどうか必ず確認を。
公式サイトから、登録事業者の確認もできる。
▶https://jutaku-shoene2025.mlit.go.jp/search-for-manufacturer
なお、国も強調しているが、登録事業者に対して国が信頼性などの保証をしているわけではない。リフォームを巡る詐欺事件などが多く、その中には「補助金が使えるので…」と勧誘してくるケースも目立つ。事業者選びは比較して慎重に選ぶことをお勧めしたい。
(リフォーム会社を比較するなら➡どんなリフォーム工事も可能|リフォーム比較プロ)
自治体ごとの補助金も見逃せない!
国だけでなく、リフォーム支援は自治体も行っている。
東京都は、省エネ性能の高いエアコン・冷蔵庫・給湯器・LED照明器具に買い換えた都民に対して、1ポイント・1円に相当する東京ゼロエミポイントを付与する事業を続けている。
現在のキャンペーンでは、機器購入時にポイント付与分を値引きしている。
買い換えの状況によって付与するポイントが変更する仕組みで、例えば、長期に使用したエアコンの場合は、最大で4万ポイントが付与される(3.6kW以上の機種の場合)。
ポイントについて詳細は下記サイトから確認できる。
▶https://www.tz-points.jp/system
また、当サイトのメインエリアとなる北多摩地域では、概ね以下の補助・助成事業が実施されている。詳細は特集ページをご参照を。
その他地域については、下記ページから、地域ごとの補助制度をチェックできる。
地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト
【リンク】
