ある日の午後、編集部に読者の女性が訪ねてきた。「近所で話題になっているのだけど、西武柳沢駅近くのガスタンクって地震が来ても大丈夫なのかしら?」――。
熊本で大地震が起きた直後のこと。言われてみれば確かに気になる。ということで、現場を直撃! なんと頂部にまで登らせていただいた。その一部始終をレポート!

明かされたその役割や設備とは
話題のガスホルダーは、西武柳沢駅南口から徒歩4分ほど。青梅街道に面して2基設置されている。この場所の正式名称は「保谷整圧所」。ちなみに、リード文で記載のように「ガスタンク」と一般的に言われるが、ガスホルダーの呼び名が正しい。
現在地に設置されたのは1971年。以来、約15年ごとに大規模点検をしながら今日まで稼働してきている。それにしても、なぜこんな町中に?
「ガスはガス管を通して各ご家庭や事業所などに供給されていますが、使用が集中する時間帯に不足してしまうため、安定供給のために一定量をためておき、適宜送り出せる設備が必要なのです。そのために、ガスホルダーが町中に設置されています」
そう教えてくれたのは、東京ガスネットワーク防災・供給部の岡田宰さん。供給エリアは厳密ではないが、イメージとしては、西東京市と練馬区をまかなう感じだという。なお、東京ガス管轄では、首都圏に30基が設置されている。
中に入っているのは、高い圧力のガス。それを送り出す際に減圧し、家庭に届くときにはさらに減圧処理がされる。こうすることで効率良くガスを供給することができる。

万一に備えた、さまざまな対策
――ということで、役割と仕組みは分かった。気になるのは安全性だ。
「球体で宙に浮いているように見えるガスホルダーですが、実際には、硬い岩盤まで杭打ちした14本の支柱で支え、下部には地震の縦揺れ・横揺れを吸収する伸縮管継手などを設けています。阪神・淡路大震災や東日本大震災でも機能に支障を来すような被害は確認されていません」
と地震への自信を示す岡田さん。でも、想定される被災はそれだけではないですが……。
「町中とはいえ、周辺の物件から距離を取っているので、火災の心配はありません。また、球体なのはガスを均圧に保管するためなのですが、台風や強風に強いという利点もあります。最上部には避雷針もあるので、自然災害への対策は万全です」
では、人災は? テロ等もあり得ますが……。
「ガスホルダーは35ミリ厚の鋼鉄で作られています。これを持ってみてください」
と差し出されたのは、手のひら大の鉄の一片。厚みが35ミリもある。お、重い……。
「1基の重さが1400トンにもなるという鉄の量です。鉄砲で打たれたぐらいなら、びくともしませんね」
それでも想定外のことがあったらどうするんですか? ……恐る恐る尋ねると、再びきっぱりした答えが返ってきた。
「実は最悪を想定して頂部にはガスの放散弁が付いています。都市ガスの対空気比重は0・638。つまり圧倒的に軽いので、放散すれば内部のガスは上空で速やかに拡散し、安全が確保されます」
インタビュー後には、地震対策を施したガスホルダー下部を見せてくれ、また、点検用の階段から屋上まで登らせてもくれた。最上部は地上から約35メートル。足のすくむ思いがしたが、一方で建造物の堅牢さも感じられた。

「最新の安全基準で、日々管理をしています」
最後に岡田さんから、心配する読者へのメッセージも預かった。
「倒れるのではないかなどと不安を感じられるでしょうが、その不安を少しでも解消できるように、最新の安全基準に即座に対応し、日々の管理を行っています。これからもご理解のほどよろしくお願いします」
ちなみに、目立つので絶好の宣伝媒体になりそうなものだが、「少しでも見る人の気持ちが和むように」と、表面を若草色にし、社名もロゴも入れていないのだという。
ということで、読者の皆さま、ご安心を!



