平井竜一候補予定者インタビュー 西東京市長選挙

2021年1月8日

任期満了に伴う西東京市長選挙が2021年2月7日(日)投開票で実施されるのを前に、タウン通信では、立候補を予定している平井竜一さんにインタビューをしました。

(※編集部注 選挙は終了していますが、地域情報として掲載を継続しています)

平井さんは前逗子市長(神奈川県)です。

大学卒業後、民間企業勤務を経て逗子市議会議員を3期務め、40歳で逗子市長に初当選。
以降、3期12年にわたって同市長を務め、現在は、一般社団法人公共経営研究センター事務局長などとして公的機関と民間とをつなぐコンサルティングなどを行っています。

今回の西東京市長選挙に向けては「こんなもんじゃないぞ!西東京市」をキャッチフレーズにさまざまな方針を打ち出しています。

インタビューの詳細は以下に一問一答でまとめていますが、抜粋版を動画に編集しています。

動画(8分41秒)

編集部注
2021年2月7日(日)投開票の西東京市長選挙には、2020年12月時点で池澤隆史前副市長が立候補を表明しており、タウン通信ではその出馬記者会見の様子を記事配信しています(リンク)。
本来、公正を期すため、平井氏の立候補表明についてもその記者会見の様子を報道すべきですが、諸般あり記者会見に参加できなかったため、この一問一答形式での記事を配信します。

 

市長経験を役立てたい

——まず、立候補を決めた理由を教えてください。

「一言でいうと、西東京市に引き寄せられたということです。

2年前まで逗子市で市長を12年務め、その後、行政と民間企業をつなぐコンサルティング業をしてきたのですが、そのなかで出会った方々から『西東京市の市長選挙に』というお話をいただきました。

そして何度も西東京市に通ううちに『この町はすごくいい』『もっともっと伸びる』と自分なりに実感しました。

この町は、市民の力がすごいです。
それが行政ともっとかみ合えば町が伸びると思ったので、『こんなもんじゃないぞ!』というスローガンを掲げました」

 

「もう一つは、合併から20年という節目を迎えているのに、しがらみによって、『決めるべきことが決められていない』と垣間見えたことがあります。

私にはしがらみがまったくないので、そういった強みを生かせます。もちろん市長としての経験もあるので、残りの人生を社会に貢献するという意味では、自分にとってもやりがいのあることと感じ、決意しました」

 

「特に今は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大という非常時です。

危機の時ほどリーダーシップが重要です。

私は東日本大震災を現職市長として経験し、計画停電などに向き合い、復興支援として被災地や福島第一原子力発電所にも行きました。

また、これは個人的な話ですが、民間企業で働いていたときに阪神・淡路大震災を兵庫県西宮市で被災しています。

そうした経験は、非常時にこそ生きます。

誰とは言いませんが、今のコロナ対策を見ても、首長の資質次第でその対応は自治体ごとに大きく差が出ています。

経験はお役に立てる要素と思っています」

 

西東京市をどうしたい?

——「こんなもんじゃないぞ!西東京市」のスローガンを掲げていますが、では、どのようなものになれるのでしょうか? 西東京市をどうしたいのか、お考えをお聞かせください。

「西東京市でいろんな方に出会うたび、すごいことをやっていて、思いや熱意もあることを感じます。それを、行政を含め、もっといろんな形でつなげていきたいです。

これまでの西東京市は、近隣市と遜色のない感じの事業、政策を展開してきたなという印象があるのですが、社会が大きく変わろうとしている今、教育でも、環境でも、もっと突き抜けていくべきだと思います。そうすることで、市民はこの町に住むことへの誇りとか満足感をもっと感じていけます。

『西東京市っていい町ですよね』『住みたいですよね』と言われるくらいの町にしたいです」

 

——そのための具体的な政策は?

「この町は子育て世代が今も移住してきていて、人口が増えています。

子どもたちがどうやってのびのびと夢を描きながら、社会にはばたいていけるか。そこに力を入れていく必要があると感じています。

時代が変わり、個の力が求められるようになっているからこそ、その子の得意なこと、やりたいことをもっと伸ばせるような教育に切り替えていきたい。

個に応じた教育という意味では、支援教育、インクルーシブ教育にも力を入れたいです。これは逗子市でも力を入れたことでした」

 

「もっとも、就任したら最初に手を付けるのは災害対策だと考えています。

西東京は比較的地震にも強く、大きな川もないから水害にも強いと思います。いちばんリスクがあるのは、恐らく集中豪雨です。

2019年の台風15号により2週間も停電が続くという被害が千葉県でありましたが、あのようなことは誰も想定していませんでした。現代は、携帯電話がなければ安否確認も行方も分からなくなるような状況がありますし、避難所でも電気がなければ命にかかわるという方がいらっしゃいます。

そうしたことから、電源確保も重要課題と考えています」

 

「実は、この面では、一つ、打ち出している公約があります。公用車の全車EV(電気自動車)化です。

電気自動車は、災害時には移動式電源になります。

私はこの全車EV化を、中古車でやりたいと考えています。

西東京市は16平方キロの広さで平坦な町ですから、公用車で一日走ってもせいぜい20キロ程度です。たとえ中古車でバッテリー能力が8割程度に落ちていてもまったく問題ありません。

その充電を再生エネルギーで行えば、『安く入手できる』『環境に優しい』『災害時に非常用電源になる』と一石三鳥です。

さらに、土日はシェアリングカーとして市民に貸し出すということも考えられます。これは実際に実験している自治体があるのですが、公用車は基本的に平日のみの利用、一方で市民の多くは『平日は車は不要』という生活をしているのですから、共用は双方にメリットがあることになります。利用料を徴収すれば、多少でも財政に好影響があります。

これは、実は私の経験に基づいた発想です。

私が逗子市長退任後に勤めた『一般社団法人 災害時電源等派遣互助協会』は千葉の事例を教訓に立ち上がった団体で、電気自動車を被災地に派遣するコーディネーション機能を担っています。その活動を通して、電気自動車のメリットや効果的な利用法を学びました。

もしこういう取り組みを西東京市が全国に先駆けて行ったとすれば、市民は『私の住むのは環境に率先して取り組んでいる町なんだよ』と誇りを持てますよね。

先ほど言った『突き抜けたことをやる』というのは、そういうことです」

選挙事務所にて

 

逗子市長4選目の落選については?

―—逗子市長を3期12年務めていますが、4選目では落選しています。そのことをどう捉えているのでしょうか。

「二つ要因があると思っています。

一つは多選です。行政の膠着を招きがちなこともあり、一般的には『首長は3期12年が節目』といわれます。私を支援してくださる方の中にさえ、『3期が適切ではないか』とおっしゃった方がいました」

 

「もう一つは、行財政改革です。

逗子市は5万7000人という小さい町なのですが、高齢化率が31%を超えており、税収は減る一方で社会保障費は上がり続ける、という厳しい財政状況がありました。

そのため、サービス水準をカットするということに手を付けざるを得なかったのですが、それがある種の批判の対象になったということがあります。

ただし、それによって逗子市の財政は回復し、一時は財政調整基金が5億円くらいにまで減ったのが今では15億円くらいまで戻っているので、その意味では、『立て直して辞めた』と認識しています」

 

——逗子市で再選を狙う道もあると思いますが。

「やり残したことがないとは言いませんが、自分としてはやり切ったという思いがあります。

選挙後には、議員時代から数えて『20年ありがとうございました』という看板を立て、1週間、駅前に立って、お礼行脚をしました。
自分なりのけじめというか、皆さんへの挨拶です。

ですから、『自分が次も』という思いはまったく頭にありませんでした」

 

——つまり、政治とは距離を取ろうと思ったということですか?

「そういう意識もありました。

ただ、自分の経験を生かしたいという思いから行政と民間企業をつなぐコンサルティング業に携わったわけですが、その活動を通して、さまざまな自治体職員や議員の方と出会い、また、民間企業の優れた提案や事業、商材、サービスを幅広く知ることができ、自分の新しい可能性を培えたようにも思ったのです。

そのなかで西東京市との出会いがあり、『自分の経験が生きるのなら、もう一度政治の世界で』と気持ちが変わったんですね」

 

コロナ禍でスムーズな市政運営ができるか

——当選した場合ですが、選挙体制から見て、いわゆる少数与党の状況になります。コロナ対策もあり、スムーズな市政運営が求められますが、そのあたりはどうお考えでしょうか。

「市長と議会は二元代表制ですので、私自身は、与党・野党というのは気にしていません。

現在、12人の市議会議員の方に支持していただいていますが、彼らにも、『是々非々でやるのが当然でしょ』と話しています。

それは、対抗馬を応援する議員の方々とも同じです。

大事なことは、市民のため、西東京市のために何が最良な答えなのかを議論し、その結論を導くことです。

その意味では、乏しい議論しかなく、ほとんどのことが賛成される状況よりも、議会が活性化し、市民の関心も向く状況のほうが、西東京市にとってもよいことだと思います」

 

時間的余裕のない新年度予算

——任期満了は2月17日なので、当選した場合、市長就任は18日です。翌年度の予算を審議する3月議会までほとんど時間がありませんが、予算案はどうされますか?

「予算編成は、恐らくいつも通りにはできていないはずです。

現職は退任を表明していますし、副市長も辞任しています(※編集部注 副市長は市長選挙出馬のため辞職)。舵取りがいないわけですから、予算編成方針を出せるはずがありません。

市長就任後に最初に議論するのは、恐らくコロナ対策の補正予算になるでしょう。

2021年度予算は暫定なりでまずは必要最小限を組み、しかるべき時期に、財政状況も見極めたうえで本予算を出すということになるでしょう。

その時期については、現在の『コロナ』第三波の沈静化や国のコロナ対策によるところも大きいので、今は何とも言えません」

 

対話型の政治を心掛けている

——最後に、政治信条を教えてください。

「対話型の政治ですね。

市民が主役とよくいいますが、主権者が政治にかかわっていくには、対話からスタートするしかありません。

対話があって初めて信頼関係が生まれますし、信頼関係があって行政や市民の協働が可能になります。一緒にまちづくりをするというのは、そこから生まれるものです。

ですから、まちづくりは対話から始まる、と考えています」

 * * *

この記事を公開した2021年1月20日現在、西東京市長選挙には、平井さんのほか、前西東京市副市長の池澤隆史さん、大手スーパー社員の保谷美智夫さんが立候補を表明しています。
池澤前副市長の出馬会見の様子はこちらの記事をご参照ください。

(※編集部注 選挙は終了していますが、地域情報として掲載を継続しています)

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