ロビーコンサートの裏に地域のアナ夫婦

 毎回6時間かけセッティング 無償で150回

「学生時代のように夫婦で一緒に楽しんでいる。だからこそ、ボランティアという形でも続けられるのだと思います」

東久留米市市民プラザで毎月開かれ、昨秋には250回を迎えた「市民プラザロビーコンサート」。

多いときでは300人超の人々が集まるほどの人気イベントに育った背景には、同市在住の女性アナウンサーと音響機器メーカーに勤める夫妻の姿があります。

東久留米市のロビーコンサートで、司会・音響のボランティアを続けている長谷川秀二・真澄夫妻

103回目からボランティアスタート

1997年にスタートし、今月26日の開催で252回目の開催を迎える「市民プラザロビーコンサート」。NHKラジオ第一放送などのアナウンサーとして活躍してきた長谷川真澄さんが司会を務めるようになったのは、2006年の103回目のことでした。

「市民プラザの管理をしていた団体に友人がいたのです。当時は、プロ・セミプロの方以外の出演もあり、『話すのが苦手なミュージシャンもいるので、司会をしてほしい』と相談を受け、まずは見学に……と足を運んだところ、当日、いきなり司会をする流れになって」

そのころ真澄さんは、出産・育児を経て、仕事は休業していました。しかし、戸惑いのなかで、再び仕事をする喜びが胸に湧き起こったといいます。

アナウンサー業に復帰し、著名な仕事がある今でも、ロビーコンサートは「私の生きがい」と話すほどの特別な存在です。

司会をする長谷川真澄さん

「せっかくだから、良い音を聴いてほしい」

会場を見ると、小さい子どもを連れた母親や高齢者の姿が目立ちます。車椅子で訪れる人もおり、道中の苦労は容易に想像できます。

コンサートをより良いものにしたい……。そう相談したのは、音響機器メーカーに勤める夫の秀二さんでした。

「ロビーコンサートは、もともと『市民に、身近な場所で音楽に触れてほしい』と始まりました。ですが、本来コンサート用ではないロビーは、音の残響が激しい。当時の来場者アンケートでも、音が聞こえづらいという感想が目立ちました」

秀二さんは大学で放送学科に在籍。その頃から音響機器に親しんでいました。

真澄さんは学科の後輩。当時を思い起こす共同作業に、夫婦で楽しみながら取り組みました。

 

使われていないミキサーに出会える幸運も

限られた予算のなかで音響の調整に試行錯誤していたところ、幸運にも、市内の施設で使われていないミキサーが見つかり、借用することになりました。

ミキサーは、複数の音声を調整できる装置のこと。

これによって、マイクを複数使用できるようになり、音響の可能性が広がりました。

音響を担う、長谷川秀二さん

1時間のコンサートのために6時間を費やす

ロビーコンサートに携わってからの12年間、クラシック音楽が好きな秀二さんは「音楽が持つ癒やしの力を知っている。趣味を兼ねてですよ」と、少しずつ自前でマイクやスピーカーなどの機材を揃えていきました。

現在では、乗用車の3列シートが埋まるほどの機材を夫婦で搬入。花などの飾り付けも含め、1時間のコンサートのために6時間に及ぶセッティング・撤去作業を行っています。

司会の進行でコンサートにメリハリがつき、音響のコントロールによって音楽に没頭できる環境が生まれました。

結果、毎回200人ほどの来場者を記録する地域のイベントに成長しました。

「町を歩いていると、『いつもロビーコンサートを楽しみにしているのよ』と声を掛けていただくことも多いです。それが、とてもうれしくって」と真澄さん。

ロビーコンサートは基本的に月に1回、予約不要、入場無料で土曜日に開催されています。予約不要、入場無料。問い合わせは市民プラザ(042・470・7813)へ。 

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