街かど診療室
保谷伊藤眼科・伊藤勇院長のコラム
眼球の表面に見える黒目を角膜といいます。
その奥に瞳といわれる虹彩と瞳孔があり、その奥に水晶体があり、これが硬くなれば老眼になり、さらに硬くなったり濁ってくることで白内障になります。その奥には眼球の大部分を占める硝子体という透明なゼリーが充満しており、この濁りなどが飛蚊症などを引き起こします。
その奥、眼球の一番奥底を眼底といい、その表面には網膜という光を感知するフィルムのような精密な神経組織が広がっています。
この網膜に増殖組織が生じ、物が歪んで見えたり(歪視:わいし)大きく見えたり(大視症)して見えづらさが増強する疾患を黄斑前膜(黄斑上膜)といい、網膜硝子体手術の分野において一番多い疾患です。
現在、眼底検査に活用できる機器が飛躍的に増え、写真で見つかり、光干渉計(OCT)で網膜の上の膜が描出され、さらに血管光干渉計(OCTA)で網膜の皺が描出されます。
この疾患の治療基準(いつ手術をするか)はいまだ策定されていませんが、最近の学会での流れは、視力が良くても歪みの自覚や大きさの違いによる見え方の違和感があれば、手術するほうが良いというものです。
手術方法の進歩
10年以上前の網膜硝子体手術では、眼球に1ミリ程度の傷を3カ所開けることによって、手術合併症がかなり多かったことを私も経験していますが、現在は多くの施設で直径0・5~0・4ミリのトロッカーという留置針を用いることにより、合併症の起こる確率は激減しました。
それゆえ、以前は症状が強くなるまで待機したものですが、手術をしてもほとんど変わらなかった歪みや大視症が、手術時期を前倒しにして早期の手術によって、日常生活で気にならなくなるまで改善する方も多くなってきています。
改善には個人差がある
神経網膜に負荷のかかる手術ですので、視力や見え方の改善が早くても1週間、長いと2カ月~2年ぐらいかけて徐々に戻っていく方もいます。
網膜という神経に対する疾患ですので、思うような見え方の改善を得られない方もいることは事実です。
検診などで指摘された際は、早めに専門医の診断を受けることが肝要です。
プロフィール
伊藤 勇