西東京中央総合病院・心臓血管外科部長 橋本 雅史医師に聞く 「血管」の大切さ
知っているようでよく知らない「動脈硬化」。老化現象として避けられないと聞きますが、本当はどうなのでしょうか? そんな気になる動脈硬化の話を中心に、「西東京中央総合病院」の心臓血管外科部長で、「血管病センター」の橋本雅史センター長に話を聞きました。
長寿社会で避けられない血管の病気
――総合病院の中に「血管病センター」を設けています。その狙いから教えてください。
「2人に1人がガンに罹患しているといわれますが、血管の病気の罹患率も同じくらい高い実情があります。
血管にかかわる病気のほとんどの原因は動脈硬化です。そして動脈硬化は加齢とともに誰にでも起こります。
言い換えれば、長寿社会において血管の病気は避けられないのです。そこで、この先の市民のニーズも考え、『センター』として、より専門化させました」
――血管の病気とはどのようなものでしょうか。
「血管が詰まったり、狭くなる病気です。
代表的なところでは心筋梗塞や脳梗塞です。ただ、救急を伴うこれらの疾患は循環器内科や脳神経外科の先生が専門的に対処しています。私も救急対応しますが、ふだん多くみるのは、足の血管の病気です」
――具体的にはどのようなものですか?
「心筋梗塞などと同じで、足の動脈も詰まることがあります。閉塞性動脈硬化症といい、代表的な初期症状は、歩くとふくらはぎの辺りが痛くなることです。放っておくと足が腐り、手の施しようがなくなります。早期治療が重要な疾患です。
それから、下肢静脈瘤。血管がコブのように浮き上がる病気で、有病率も高いですが、レーザー治療が有効で、過度に恐れる必要はありません。
それと、深部静脈血栓症。エコノミークラス症候群として知られる病気です。足にできた血栓が肺に飛び呼吸困難を招く病気で、最悪のケースは突然死を引き起こしますが、早期発見ができれば外来の内服だけで治せます。血栓ができやすい体質の方は要注意です」
10年後、20年後の健康のためにできること
――いずれにせよ、早期発見が重要ですね。
「やはり健康診断を受けることが大切です。人間ドックなどは別として、実は健診の主な目的は動脈硬化を調べることなんですね。
血管はすべての臓器に関係するので、人間の寿命は動脈硬化に規定されているともいえるぐらいです。
動脈硬化の主な原因は、高血圧、喫煙、糖尿病、高コレステロール、肥満の5つ。健診でこれらをチェックし、必要なら早めに薬を飲んでいくことが大事です。
それを怠ると、10年後、20年後の健康状態に大きな差が出てしまい、後悔することになります」
――血管のスペシャリストとして、これからの地域医療の在り方をどう考えていますか。
「先に述べたように、動脈硬化自体は正常な老化現象で、誰にでも起こることです。大切なのはそれをどう遅らせ、また、進んだときにどう対処していくかです。
救急処置だけでなく、健康寿命を延ばす方法を市民の皆さんに正しくお伝えすることも、我々の役割と考えています。
そうした考えから、当院では無料の『市民公開講座』を開くなどしています。血管病センターでも、7月から、『あなたの足の血管、気になりますか?』をテーマにした無料相談会を土曜日に行う予定でいます」
(※編集部注:血管病センターの無料相談会は取材時の情報です)
「はい。明確な症状がないため診療にかかっていないという方は多いはずです。でも、なんとなく足が痛くて気になる、という方にご相談いただければと思います。その場ではヒアリングだけですが、今後に向けたアドバイスをいたします」
ABI検査を実施中
血圧測定により動脈硬化を簡単に調べられるABI検査を、同院では、西東京市健康診査を受けた70歳以上の人限定で、500円で実施しています。血管年齢などが分かるというので、気になる人は受けてみては。
(※編集部注:取材時の情報です。受診を希望する方は、事前に実施の有無などご確認ください)
※所属・肩書きは取材時のものです (←2回りくらい文字を小さくして記載)