巧妙な手口を警戒せよ 都内ワーストクラスの被害数
被害者の大半を高齢者が占めているのが、ここ20年来、多発している振り込め詐欺です。
いわゆる〝オレオレ詐欺〟。
昨今はその家の資産情報を得るため、あらかじめ電話して確認する〝アポ電〟なるものまで登場しています。
西東京市と東久留米市を管轄している警視庁田無警察署に、振り込め詐欺の特徴や犯行の手口、それを防ぐ方法を聞きました――。
西東京・東久留米の被害が多いワケとは
「昨年は西東京市で47件、東久留米市で37件もの被害届が出ています。都内には102の警察署がありますが、その中でワースト4位なんですね」
と田無警察署。
西東京市と東久留米市を合わせると、人口はおよそ32万人と、それほど多くはありません。
区部にはもっと人口の多い世田谷区や杉並区、あるいは資産家が多い港区、目黒区、武蔵野市などもありますが、いったいなぜ……。
「65歳以上の高齢者の都内平均は23・0%ですが、うちは25・3%。高齢者はおよそ8万人も住んでおり、比較的高齢者が多いというのが一つ。
二つめには、畑などを持っている地主さんが多いということ。
三つめは、管内には西武池袋線・新宿線の2本の鉄道が通り、駅は6つ。その駅周辺に金融機関やATMが集まっており、犯人側からすると、そこで金をおろして、逃げやすいという事情があると思います」(田無警察署)
また、土地柄というか、地域ならではの特性もあるとか。
「都会でも田舎でもなく、のんびりとしていて、割と人を信じやすい方が多いのでは」(同)
依然多い「オレオレ詐欺」
次に、昨年の振り込め詐欺を種類別に見てみよう。
西東京市ではオレオレ詐欺が30件、還付金詐欺が3件、架空請求詐欺が13件、その他が1件、発生。同じく東久留米市ではオレオレ詐欺が20件、還付金詐欺が6件、架空請求詐欺が11件でした。
「最近のオレオレ詐欺は、現金を自宅に取りに行くというのはほとんどなく、西東京市の30件はすべてキャッシュカードを奪うやり方です。
銀行協会、警察、市役所などを装い、『お宅のキャッシュカードが百貨店で不正に使われてしまったので、使えなくなった。新しいものと交換しますので、茶封筒に入れて用意しておいてください。別の仮のカードを持って行きます』と言うんですね。
それでカードを取りに行って、暗証番号も聞き出す。
銀行協会や警察のニセの身分証明書を持ってくることもあるので要注意です」(同)
高齢女性、独居者に目立つ被害
だまされるのは、圧倒的に女性の高齢者が多いとのこと。自宅にいることが多く、自宅の電話に真っ先に出る確率も高いからだとか。
さらに、独居の場合、話し相手があまりいないので、寂しい。そんな弱みにつけ込むのも詐欺の手法だそうです。
「アポ電というのは、最近、つけられた名称で、昔からありました。
犯行をする側が感触をつかむ、探りを入れるためのもので、息子を名乗り『ボクが送った果物は届いた?』『また電話するね』などといって、日を置いてまた電話することもあります。
あるいは、キャッシュカードや現金を受け取る『受け子』が近所に来ている場合などは、わざと長電話をします。その間は電話を使っていますので、110番通報はできませんから」(同)
防ぐにはどうすれば?
では、こういった詐欺から、身を守るためにはどうすればいいのでしょうか――。
「やはり、こういった電話に出ないことです。
電話を自動通話録音機つきの電話に替えるとか、知らない電話番号からかかってきた場合に呼び出し音が出ない迷惑電話防止機能つきの電話に替えることです。
自動通話録音機は市役所や田無警察署でも無料で貸し出しています(ただし昔の黒電話には設置不可能)。
それから、もし電話があった場合は即答せずに、身内や知人に相談する。もしくは警察に110番してください。
それと、キャッシュカードは絶対に他人に渡さないことですね」(同)
98%の人が「自分はだまされない」
警視庁調べでは、こうした詐欺に自分だけは引っかからないと答えた人は98・1%。だが、相手は百戦錬磨のだましのプロ。マニュアルも存在します。
根拠のない自信や過信が災いをもたらすと肝に銘じておきたいですね。