在宅診療NOW
まつばらホームクリニック 松原清二院長のコラム
昨今、オプジーボなどの抗がん剤治療の目覚ましい進歩や、遺伝子パネル検査による従来の概念にとらわれない抗がん剤治療が行われるようになっています。
こうした最先端のがん治療自体はとても有効な治療法ですが、一方で抗がん剤投与などで血管や心臓が痛めつけられるため、がんからの生存者であるがんサバイバーに対しての心臓や血管のモニタリングや早期の治療介入が必要であるという概念が出てくるようになりました。これを腫瘍循環器学といいます。
具体的には薬剤で心筋が痛めつけられ、心臓の収縮する能力が低下し、心筋症が発症、息切れや体のむくみといった心不全症状などが出た場合、抗がん剤投与を決めた腫瘍内科医と心臓や血管を専門とする循環器内科医が今後の治療方針を協議し、早期に心不全の症状に対して薬剤投与をしていくことなどが求められます。
その際、がんに関連した代表的な薬剤としては複数(アンスラサイクリン系薬剤、抗HER2製剤、VEGF阻害薬、プロテソーム阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬など)が挙げられるため、がん患者に関わる循環器内科医は、がんに関連した心疾患の専門的な知識が求められる時代になってきました。
在宅診療では、がんを患い、専門病院に通院しながら抗がん剤治療をされている方々が少なからずいらっしゃいます。
私自身は循環器が専門でしたので、これまでの心疾患の専門性を生かしながら、腫瘍内科医と相談を重ねて、ご自宅で療養するがん患者さんにより良い治療を提供していければと望んでいます。