募集を前にスペシャルインタビュー 「寺子屋」で学んだ青年に本音を聞いた
小中学生を対象に無料で学習指導を続けているNPO法人「稲門寺子屋西東京」(寺子屋)が、4月からの生徒を募集し始めます。それを前に本紙では、実際に「寺子屋」で学んで高校に入学したという向里武蔵さんから話を聞きました。生徒から見た「寺子屋」とは――。
(※インタビューでは敬称略)
「寺子屋」は、経済的理由などで塾に通えない小学5・6年生、中学生を対象に無料学習指導を行っています。活動目的は「経済格差による教育格差を生まない」というものです。家庭の事情が背景にあるだけに当事者へのインタビューには心配もありましたが、向里さんは「まったく問題ありません」と快諾してくれました。
* * *
向里「母子家庭です。塾には行けないものと思っていましたが、母が寺子屋を見つけて、中学1年生から3年間通わせてくれました。
途中で他市に引っ越したのですが、最後まで寺子屋が受け入れてくれたので、自信を持って受験に臨めました。
第一志望の都立立川高校に入れて、今は充実した高校生活を送っています」
◆
そう話す向里さんは、寺子屋では数学と英語の2教科を選択し、週に2回通っていたそうです。その授業をどう受け止めていたのでしょうか?
* * *
向里「先生一人に対して生徒は1人か2人という授業だったので、分からないところがすぐに聞けて、短時間で集中して学べたと思います。
ぼくにとって大きな体験だったのは、英語の先生がぼくのためだけに特別のテキストを作ってくれたこと。中学1年生の夏ごろだったのですが、つまずき始めていたところを立て直すことができ、逆に、英語が得意科目になりました。
今でも英語は好きで、得意です」
◆
インタビューには指導者の竹森英次さんも同席してくれました。向里さんのコメントについて、こう補足してくれました。
* * *
竹森「一人ひとりに目が届くので、『ここをしっかりやらないといけないな』というときに、じっくりと取り組めるのです。
寺子屋では受験指導はしないので、先を急いだり、難題に取り組んだりということは基本的にしません。
私たちが重視しているのは、子どもたちが自分で学ぶ力を身に付けることです。つまり、学習習慣ですね。
それには、勉強が嫌いになってはいけません。『分かる』ということの喜び、楽しさを教えたいと思っています」
◆
そうはいっても、公立校の中学生なら高校受験は避けられないものです。「寺子屋」への不安感はなかったのでしょうか?
* * *
向里「全国模試などを自分で受けに行っていたので自分の学力は把握できていましたし、過去問などは入手できるので、焦るということはまったくありませんでした。
むしろ、受験前に先生方が応援してくれて、力になりました」
◆
そんな向里さんは、勉強以外の教えにも感謝を口にします。特に、指導者の何げない世間話が刺激になったようです。
* * *
向里「先生たちはみんな社会経験が豊富で、中には海外駐在をされた方もいらっしゃいました。
海外での話などはとても興味深く、『自分ももっと勉強して、外国にも行ってみたい』とモチベーションにもなりました。
これから通う人たちには、どんどん先生たちと話をしてみて、と伝えたいです」
++++++++
緊張ぎみだった向里さんもだんたんと打ちとけ、インタビュー後は竹森さんと久しぶりの再会に話を弾ませていました。
説明会を開催
保護者と生徒への説明会・面談が3月14日と15日に、西東京市田無総合福祉センターで開かれます(1階ロビー集合)。
午前9時30分と10時50分から。なお、各公民館に募集チラシが置かれています。
詳しくは理事長・金子さん(080・4125・1038)へ。
寄付の呼びかけも
「寺子屋」では、寄付を募っています。
ボランティア活動ではありますが、教材費・講師の交通費・授業を行う公共施設の利用など運営負担は大きいそうです。
「無料指導を続けるには寄付に頼るしかありません。『地域の子どもたちをみんなで育てよう』というお気持ちでご賛同いただけると幸いです」と事務局長の高木さんは話します。
銀行振込の場合は左記(三井住友銀行/田無支店/普通/4114594/特定非営利活動法人「稲門寺子屋西東京」)へ。 寄付の詳細は同会ホームページにも記載しています。
稲門寺子屋西東京 https://www.terakoya-nt.org/