高齢者の心身の健康に、「社会参加」が注目されています。
社会参加は、外出の機会や人との交流、何より、知見を生かして社会貢献できることにつながり、高齢者の生きがいにもなります。
実際、この地元でも、年齢を感じさせないバイタリティーで地域活動をしている人は多いです。
その一人、今月98歳になる都丸哲也さんに迫りました。
生涯現役で走り続ける
元保谷市長。保谷町時代の町議から10年間議員として活動。1977年市長に当選。72歳まで4期16年を務め、とくに福祉と教育に力を注ぎました。
全国で初めて個室特別養護老人ホームを開設、乳幼児医療の無料化などを実現したことでも知られます。
政界引退後も、東京原水協などの代表理事を務めたり、憲法の学習会を催したり、休む間もなく活動を続けてきました。その多くは、今も継続しています。
「これは、議員の頃から言っていることですが、『平和』と『基本的人権』を守ることが政治家の役割。そのためには『日本国憲法』の精神を学び、子どもたちの『教育』の土壌を整備しなくてはなりません」
日本国憲法施行よりも約1カ月早く教育基本法が制定されたことを重く感じるべきといいます。
原点は戦争体験
こうした都丸さんの「平和」「人権」意識の原点となったのは、一兵士として召集された戦争体験でした。
ボルネオ島で飛行場を守る部隊に配属。他の戦場ほど苛酷な状況ではなかったが、食糧難に苦しんだといいます。終戦後、捕虜として半年間暮らしました。
都丸さんが最も鮮明に覚えているのは、兵士たちが列を作って復員船に向かった時のこと。道路脇に並ぶ現地の人々から、日本兵が頻繁に口にしていた「バカヤロー!」の言葉を投げつけられました。中には投石も……。
「戦争中は笑顔で接してくれた人たちでしたが、解放された途端に本音が表れた。これが戦争なんだなと、しみじみと感じました。
こんな思いを次の世代に味わわせてはいけない。戦後の私の活動は、そこからスタートしているんです」
現役の「語り部」として
一昨年からやはり発起人として名を連ねているものに「全国の首長による九条の会」があります。
これは、知事から町長、村長に至るまで、「元」「現」を問わず、さまざまな首長に呼びかけているもの。保守も革新も関係なく、「九条」に代表される日本国憲法の精神を尊び、そこから地方自治を見つめ直そうという活動です。
平和にしても基本的人権にしても、そのベースは地方自治にあるはず。その「地方」がないがしろにされつつあるのが現代ではないか。その思いが呼びかけにつながったといいます。
「地方自治は主権者たる市民の権利を守ることに力を入れないといけません。その意識が薄れている今は市民にとって非常に困ったことなんです。
そうした危機感を抱く元首長、現役首長たちと手を携えていきたい。さすがに、元首長でも私が最年長になってしまいましたけどね」
長寿の秘訣? 「特にない」
学生時代に結核のために左肺を切除しました。それが唯一の大病で、それ以外は健康そのもの。
「食べられるから元気なのでしょう。とくに健康法もやっていませんし、日常的に気をつけていることもありません」
そもそも「年齢のことなど考えている暇もない」といいます。
さまざまな集まり、学習会や勉強会の顧問や世話役を頼まれることも多いそうです。
「自分から意義を感じて動き回っていますから、それが活力になっているのかもしれません。平和にしても憲法にしても、今もなお学ぶことばかりです」
戦争や自然災害など人々の体験はやがて風化していきます。
それを防ぐには、語り続けねばなりません。都丸さんはその役を、体力が続く限り務めるつもりです。
自治体も後押しする「高齢者の社会参加」
高齢者の社会参加については自治体も後押ししています。
例えば、西東京市が取り組む高齢者の「フレイル(=虚弱)予防」事業でも、身体機能、認知機能の衰えと併せ、「社会性の虚弱」が予防対象となっています。
国も、昨年閣議決定した「高齢社会対策大綱」で高齢者の学習・社会参加の促進をうたいます。
なお、2013年の意識調査では、高齢者のグループ活動による効果として、上から「新しい友人ができた」(48・8%)、「生活に充実感」(46%)、「健康や体力に自信」(44・4%)となっています。