老若男女対象に、小平のNPO「よろこび」が開催
大勢で食卓を囲み、より豊かな食事の時間を——。
そんな思いのもと、小平市を拠点に活動するNPO法人よろこびが「子どもと大人の食堂」を開いています。
生活が苦しい家庭や仕事で親の帰りが遅い地域の子どもに無料もしくは安価で食事を提供する「こども食堂」は全国で取り組みが広がっていますが、老若男女を対象にしているのがNPO法人よろこびの特徴です。
厨房から食欲をそそる香りが流れてくるなか、1組の親子が卓球を楽しんでいる。ラリーが続かず、明後日の方向にピンポン球が飛んでいくたびに、男の子と母親は悲鳴にも似た声を出して笑っている——。
「普段、仕事が忙しくて一緒に遊べないので、毎週の、この数十分が大切な時間です」
そう話すのは、小平市に住む50代の女性。シングルマザーで、現在は3人の子どもと同居しています。
この日、一緒に来た小学校高学年の男の子は末っ子で、大学生・高校生の兄弟は部活やアルバイトなどで帰宅時間がまちまち。普段は2人で食卓を囲むことが多い分、「子どもと大人の食堂」の賑やかさに心が温まるといいます。
この男の子はもともと、同食堂を運営するNPO法人よろこびが開く学習支援に通っていました。
無料学習塾から子ども食堂へと
「無料学習支援の部屋よろこび」として、学習塾に通えない児童や学習が遅れている児童の支援を始めたのは、2016年7月のこと。その後、「子どもと大人の食堂」の取り組みを始めるにあたって、18年3月にNPO法人よろこびを立ち上げました。
活動の背景にあったのは、子どもの貧困問題です。
2015年度の厚生労働省の調査によると、17歳以下の子どもの貧困率は13.9%。およそ7人に1人が貧困(※一人あたりの可処分所得の中央値の半分に満たない所得額で暮らしている)状態にあるとされています。
「自分たちにできることはないか」
同法人の理事長・山口洋さんは、子どもの貧困問題を知っていくなかで、「自分にも何かできることはないか」と学習支援の活動を始めました。
現在、市内の学校に通う小・中学生約15人が、よろこびのスタッフから勉強を教わっています。
元塾講師や学校の教員免許を持つ者もおり、高校受験の対策も可能だそうです。
「困っているのは子どもだけではない」
「子どもと大人の食堂」は同法人のスタッフで、以前は小平市内の小学校で事務員を勤めていた小松多佳子さんの発案によるものです。
「学校にいた頃から、夕食をちゃんと食べられていない子どもがいることは把握していました。
ただ、困っているのは子どもだけではない。一人で住んでいる高齢者や、共働きをしていて夕食をつくるのが大変というお母さんもそう。
いろいろな人がほっとできる場所をつくりたいと思いました」
と小松さん。
カトリック信徒がメインスタッフ
ユニークなのは、約30人いる同法人のスタッフの多くがカトリック小平教会の信者によって構成されていること。困っている人々を支えるのは、カトリックの教えでもあります。
一方で、「学習支援のなかでキリストの教えを説いたり、食事の前にお祈りを強制されるのではと誤解されないようにすることが大切です。そうした考えから、教会としての活動ではなく、公的な団体としてNPO法人を立ち上げました」と山口さんは説明します。
冒頭の母親も「最初は、学習支援が無料だなんて怪しいと思いました。でも、あの子は小学校高学年なのに2年生までの学習内容しかカバーできておらず、特殊学級に通っていた。わらにもすがる思いでした」と振り返るります。
学習支援を受けてから1年が経ち、現在では同級生と同じ学習レベルに追いついたそうです。
「誰でも来られる場所。気軽に立ち寄って」
食堂の開設以来、毎回足を運んでいる70代の女性は「家ではいつも一人で食事をしているのでさびしい。でも、ここではいつも10人以上で食事ができる」と、その魅力を話します。
「こども食堂と言うと貧困のイメージが強く、抵抗を感じる人もいます。でも、私たちの食堂はどなたでも来られる場所。地域の人たちにとって、心が落ち着く場所になれば。
くどいようですが、食事中も教会に関する話はしていません。気軽に立ち寄ってください」
と山口さん。
月2回火曜日に開催
「子どもと大人の食堂」は、毎月第2・4火曜日の午後6時から7時半まで(※要予約)。学習支援は毎週土曜午後2時半から5時までで、小学3年生から中学3年生までが対象です。
問い合わせは学習支援=山口さん(090-9673-1489)、子ども食堂=小松さん(080-5530-4564)まで。
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