そのとき、どうさばく?―― ゲームでイメージを膨らます
災害時に避難所はすぐ起ち上がるのだろうか――。
震災発生の不安が高まるなか、西東京市で、ゲームで避難所づくりを体験してみようという試みが広まっています。
そのゲームの名は、ズバリ「避難所運営ゲーム(HUG)」。熊本地震もあって「避難所」が話題になっている今、ゲーム開催の現場を覗いてみました。
さまざまな状況に直面 ボード上で疑似体験
「60歳男性、ペットを連れています」
「え? ペット? ペット同伴者のスペースを作ろうか?」
さる5月21日(日)、西東京市立上向台小学校でのこと。地域住民らでつくる避難所運営協議会(注1・下記補足)と教職員の約50人が、8つのテーブルに分かれてゲームに取り組みました。
ゲームは、テーブルリーダーが避難所に逃れてくる人を次々と読み上げ、メンバーがそれを体育館や空き教室に振り分けていくというもの。
乳幼児、障がい者、高齢者、持病のある人……。
カードに名前や家族構成などの本人情報が書かれており、体育館や教室として用意された模造紙に1枚1枚置いていきます。
その比率からカード1枚は人一人分のスペースとなっており、適切に避難所の運営ができているか疑似体験できる仕組みです。
スピードよりも、いかに的確に判断していくかが重要
読み上げる速度に決まりはなく、テーブルごとに進行具合は異なります。
次々と判断を下すテーブルもあれば、悩みながら意見をぶつけ合うところも。早ければ良いというものでもなく、いかにスムーズに避難者が納得できる振り分けをしていけるかがポイントです。
合間には、「一旦家に帰りたい」という人が突如現れるなど、ハプニングも起こります。
静岡県生まれのゲーム
このゲームは静岡県が開発したもので、西東京市では、まちづくりに取り組む市民団体「田無スマイル大学」が短時間でできるようにアレンジし、市民協働推進センター「ゆめこらぼ」が各所に出向いて実施しています。
ゲームには各テーブルのカード配布係など人手が要ることから、防災活動に取り組む市民ボランティア団体「西東京レスキューバード」なども協力参加しています。
各チームでそれぞれに課題が浮かび上がる
上向台小で行われたゲームは約1時間。終了後には全員で各テーブルを見学し合い、それぞれの配置の違いを確かめました。
ペットに対して、隔離するテーブルもあれば、ゆったりとスペースを与えるところもあり、考え方の違いがはっきり出ています。
感想を述べ合う時間もあり、
「弱者をどうするかなどあらかじめ基準を決めておく必要を感じた」
「カードの配置にとらわれ、通路を作るのを忘れてしまった」
「次の機会があれば、既製品ではなく、当校の状況に合わせてやってみたい」
などの意見が出ていました。
中には阪神・淡路大震災の被災体験者もおり、「被災直後はみんな『とにかく安全なところへ』と逃げ込んでくる。振り分けは段階的に行うこととし、まずは体育館にどんどん入れてしまうべきでないか」といった意見もありました。
学校での実施を企画した同校の神山繁樹校長は、ゲームを行う利点をこう話します。
「1回疑似体験することで実際の場面をイメージしやすくなるし、意識も高まります。地域の方々と教職員が交流する場としても有効です」
西東京市では30回以上実施 さらに拡大も
なお、西東京市ではこれまで、学校や公民館、地域住民懇談会などで約30回実際されています。
この7月には初めて、田無スマイル大学の主催で、中学校で中学生が体験する予定にもなっています。
避難所運営ゲームについてなど、詳しくはゆめこらぼ(042・497・6950)へ。
[注1]避難所運営協議会
日頃から災害に備えることを目的に、避難所に指定されている施設に設置されています。施設関係者と地域住民とで組織しています。西東京市では、学校での組織作りを強化しており、全27小中学校で設置されています。
◎ゆめこらぼ(西東京市市民協働推進センター)