節目に

2018年10月17日

タウン抄

「タウン通信」代表・谷 隆一コラム  タウン抄 

 

今回、節目なので、写真を替えてみた。

――あ、いや、本題は写真ではない。節目というのは、本紙発行のことだ。 

ご記憶の方もいらっしゃると思うが、この地域では、「週刊東興通信」というタブロイド判地域紙が50年発行されていた。それが休刊したのが2008年9月。それを受けて、当時編集部員でもあった私が創刊したのが本紙「タウン通信」だ。その創刊日は10月15日。

あれからちょうど10年になる。さて、何かを少しでも進展させられたのだろうか。

何も発展させられていないともいえるし、続けられているだけで十分という見方もある。人の評価はそれぞれだろうし、個人的な問いは己一人で向き合うことにしたい。

ともあれ、一つはっきり言えるのは、当時とはメディア環境が激しく変わっているということだ。紙媒体の衰退は著しく、地域メディアでも、各社、部数や発行頻度を減らしている。本紙も休刊日が出てしまうのが現状だ。

先日は読者から「経営は大丈夫か?」の心配のお声をいただいた。広告が集中する号では、「情報が足りない」といったご批判も頂戴する。形こそ違え、本紙に対する期待の表れと受け止めている。

紙媒体の置かれる状況は、この先ますます厳しくなるだろう。10年後には、今とまったく異なった光景が広がっているに違いない。

ただ、私自身は、その変わりゆく中で、もがけるだけもがくつもりでいる。この節目に、そのことだけは表明しておきたい。

10年前、「タウン通信」を創刊した朝に最初にかかってきた電話は、名を名乗らない女性からの「出してくれてありがとう。それだけ伝えたかったから」という二言のものだった。苦しいとき、名も顔も知らぬその読者のことを何度も思ってきた。待っていてくださる読者がいると信じられるのは、なんとありがたいことだろう。

時々休刊を交えながらですが、長く発行し続けられるよう精進します。引き続きご愛読のほどよろしくお願いします。

(2018年10月17日号・本紙掲載分から転載)

 

谷 隆一

株式会社タウン通信代表取締役。地域紙「タウン通信」を多摩北部で約10万部発行、ウェブサイトでも地域情報を発信する。著書に『議会は踊る、されど進む〜民主主義の崩壊と再生』(ころから)、『中高生からの選挙入門』(ぺりかん社)、『起業家という生き方』(同、共著)、『スポーツで働く』(同、共著)、『市役所で働く人たち』(同)がある。

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