「地域で最期まで自分らしく」
住み慣れた地域で最期まで自分らしく――高齢社会に地域ぐるみで向き合おうという取り組みをいち早く実践してきた「ケアタウン小平」が、10周年記念のシンポジウムを開きました。
発言の数々から、「つながり」「支え合い」の必要性が見えてきました――。
10年で700人を自宅で看取り
小平市にある「ケアタウン小平」は、末期がんなどで治療が難しくなった患者の肉体的苦痛を和らげることを主にした「ホスピス緩和ケア」を在宅で行うための施設です。2005年に開設されました。
同所では、訪問診療を行う「ケアタウン小平クリニック」をはじめ、自宅での看護を行う「訪問看護ステーション」、介護に必要なケアプランなどを提案する「ケアマネジメントセンター」、「デイサービスセンター」など、複数のサービスを敷地内で展開。連携を深めたサービスの実現により、現在までに700余人をその自宅で看取ってきました。
包括支援の先駆け
これらの取り組みは、約800万人にもおよぶ「団塊の世代」が75歳以上となる2025年を目安に厚生労働省が進める「地域包括ケアシステム」に先駆けるものとして、改めて注目を集めています。
この「ケアシステム」は、重度の要介護状態になった場合も住み慣れた地域で最期まで自分らしく暮らし続けられるように、住まい・医療・介護・予防・生活支援など、地域による包括的なサービス提供体制の構築を推進するというものです。
このように関心が高まるなか、さる7月24日には、開設10周年記念のシンポジウム「住み慣れた街で生きて逝く~ケアタウン小平の今まで。そして私たちの街のこれから」(主催:NPO法人コミュニティケアリンク東京)がルネこだいらで開催されました。
クリニック院長でターミナルケアの第一人者である山崎章郎さんの講演や、遺族の体験談、職員の仕事への思いなどが語られました。
紹介された同所の取り組みの一つに、残された遺族の精神的なケアなどがあります。
08年に設立した遺族会「ケアの木会」では、家族を看取った人たちが集まり、療養の思い出や心境を打ち明けます。同じ土地に住み、大切な人を亡くすという共通の体験をした者同士がつながりを持つことで、地域で互いに支え合えるようにというものです。
孤立を防ぐには
同所がいま目指すのは、「ケアを通じて互いに支え合えるコミュニティ」の形成です。
10年にわたる取り組みのなか、病気を抱えた一人暮らしの高齢者が増えた場合、誰がその生活を見守っていくのかという課題も見えてきました。
約20年後には、高齢者の一人暮らしが100万世帯を超えると予想されており、現在でも特別養護老人ホームへの入居待ちは50万人以上にのぼります。
そこで「第3の終の住処」として注目を集めているのが、民家を活用したホームホスピスです。常駐する看護師や介護ヘルパーが入居者のケアをすることで、365日24時間、医療下で暮らせます。
こうした実情を紹介した山崎さんは、最後に今後の展望も話しました。
「ボランティアのみなさんと協力し合い、最期まで住みたいと思える地域社会をつくっていきたい。小平市医師会と市の議論も始まっています」
実際、同所では、地域の住民を対象にした勉強会や、子ども向けのイベントも開いてきています。近頃、10年ほど前にイベントに遊びに来た子どもが大学生になって、ボランティア参加しているといいます。
地域にまいてきた種が、徐々に芽を出し始めています。
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