探検家・関野吉晴さん「世界を旅して、足もとの大切さに気づいた」

いま、市民にできることとは

――その市民についてお聞きします。
地球永住計画もそうですが、関野さんは『人類滅亡を避ける道』といった対論集まで出されています。

それらを通して、大量生産、大量消費の文明社会に警笛を鳴らしているわけですが、一方で先ほどは、グローカルというお話もありました。いま、市民にできること、あるいはすべきこととは何なのでしょうか。

「悲惨な歴史を持つアメリカ・インディアンに『何か手伝えることがありますか?』と聞くと、『いや、別にわざわざ来てやることはない。あなたたちの大地をいつくしんで、正しく生きてください。

それが私たちを救うことです』と言うんですね。

それは、ダライ・ラマ14世もそう言うんですよ。

ぼくは、人にとって何が大切かというと、『当たり前のこと』だと思います。

それは、家族と一緒に住める、好きなところに住める、好きなことが仕事にできる、好きなことが言える、といったことだと思います。

病気になって初めて健康の大切さに気づくように、私たちは、その当たり前のことを大切だと気づいていません。

しかし、そういうものをむしばんでくる人がいます。経済の力で。経済のために仕方がないじゃないか、と。

それを守るのは自分たちしかいない、ということを知ることが大事です。
いま、ちょっとまずい状況だと思います。3.11のときに変わるかと思いましたが、すぐに、経済、経済となってしまいました。

それは自分のことなんだよ、自分で守るしかないんだよ、ということは強調しておきたいです」

 

メッセージは……、「ほどほどに」

――最後に、いま考えていることを教えていただけますか?

「ぼくは書店などで『何か一言書いてくれ』と言われたら、『ほどほどに』と書くようにしています。

これまでの文明を築いてきたのは、『もっともっと』という欲望です。それに対して、これからの社会を守っていくのは『ほどほど』の精神だと思うのです。

実は『ほどほどに』というのは、自分への戒めでもあるんですけどね。すぐ、いろいろやりたくなってしまいまう性格なので(笑)」

関野吉晴さん公式ホームページ

武蔵野美術大学美術館

地球永住計画

※編集部注
企画展では、美術館で写真展示などを行うほか、キャンパス内の地下通路に約330点もの写真を展示。ほかに、普段は植村直己冒険館で 保管されている、手作りの船「縄文号」が特別展示されている。縄文号は、丸太をくりぬき、すべて自然物で手作りした船。木を切るための斧や刃物さえも、砂鉄を集め、たたら製鉄して手作りしている。関野さんは、この船でインドネシアから石垣島まで約4700キロを航海している。

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