11月10日(日)までの予定で、武蔵野美術大学(小平市)キャンパス内にある「武蔵野大学美術館」で、企画展「関野吉晴ワンダースペース」が開かれています。
(※編集部注 イベントは終了していますが、地域情報として掲載を継続しています)
関野吉晴さんは、人類拡散の旅路「グレートジャーニー」を逆ルートでたどった探検で著名な探検家で医師。同大学で文化人類学を教える教授でもあります。
この企画展は、探検家・関野さんの約50年の行動を5つのテーマに分けて紹介するというもの。企画展に合わせ、展示の狙いや、進行中の活動などについて、関野さんに話を聞きました。
定年を前に、記念として大学美術館で企画展
――今回の企画展は、大学の美術館で開催しています。決してアクセスの良い会場とはいえませんが、なぜここで開催を?
「ぼくは来年の1月で70歳になり、定年を迎えます。武蔵野美術大学では2002年から教授になっているので、17年在籍したことになります。今回は辞める前の記念ということです。
集客力がない会場とは分かっていますが、私としては学生に見てほしいという気持ちが強いです。
ただ、実は今回は、ここに留まりません。たまたま話が広がり、鷹の台駅前商店街の突き当たりにある創価学園グラウンド跡地の壁を利用させてもらえることになりました。そこで、400メートルぐらいの壁を使って、大きく引き伸ばした写真を展示する予定です。
美術館では人の写真が中心なので、この壁面では、自然の風景——地球の表情を飾ろうと思っています。
こちらの企画は、私が代表を務める「地球永住計画」が主催します。
壁面利用の関係で、ちょっと企画展とは開始時期がずれるのですが、その分、年末まで展示を続ける予定です。
地域の人たちが見て、興味を持ってもらえればうれしいです」
5つのテーマのその意味は…?
――企画展では、テーマを5つに分けています。「長い目でみる」「いちからつくる」「食べて出す」「みえないものに向き合う」「交わり拡がる」の5つです。その意図を教えてください。
「『いちからつくる』などは説明不要と思いますが、『見えないものに向き合う』というのは、信仰のことですね。
信仰というのは、火があって、病気があり、いろんな不安があって生まれています。都市社会ではあまり気にならないかもしれませんが、いろんなところを回ってくると、それが大事なことが分かります。
今の文明社会の負の側面がなんで起こっているかというと『もっともっと』という肥大した欲望のせいなのですね。それも、コマーシャルであおり立てられたものです。
前に、イスラムのところを旅していて、何気なく『家畜がもっと増えるといいですね』と言ったことがあります。そのとき返ってきた答えは『これは神から預かったものだからこれで十分』というものでした。
ミャンマー人などでは、違う宗教——小乗仏教ですが、彼らはものすごく優しいのですね。親切です。なぜか? 彼らは来生を信じていて、功徳を積みたいと思っているからなんです。親切にするのは、自分のためなんですね。
私たちの『もっともっと』という欲望の文明を転換するには、宗教がかぎを握っていると思っています」
――今の日本で、宗教が復権するでしょうか?
「私たちの中には、依然として『見えないものに向き合う』精神が残っていると思います。
たとえば、『縁起が悪い』と言いますよね。スポーツなどでも、『ラッキーセブン』とか、『このバットなら打てる』とげんを担いだりします。我々は、そういうものを無視しているわけではないんです」