山村基毅さんは、人物インタビューを基軸にしたノンフィクションを得意とするルポライターです。
近年の著書に『認知症とともに生きる』(幻冬舎MC)、『ルポ 介護独身』(新潮社)などがあり、自身の誕生日でもある2月4日には、西東京市田無公民館で「介護」がテーマの講演を予定しています。
(※編集部注 イベントは終了していますが、地域情報として掲載を継続しています)
1度も就職せず、学生時代からライターに
最近でこそ介護・認知症の著書が続いていますが、元来は守備範囲が広く、「何でも書く」というスタンス。これまでの著書のテーマも、木遣り歌、近代登山、民謡酒場――などと多彩です。
ルポライターになったのは、子どものころからの憧れがあったから。大学進学のため北海道から上京すると、新聞広告で見つけたライター募集に飛びつきました。
当初は求人関係の取材・執筆で腕を磨き、自信を得てからは、片っ端から出版社に企画書を送ったといいます。
それから約35年。
さまざまなテーマを扱いながら、一貫して心がけているのは「読者が元気になるような話をお届けする」ということです。
そのスタンスが決まったのは27歳のとき。借金をしながら3年かけて書き上げた処女作『戦争拒否―11人の日本人』(晶文社)の取材を通してでした。
「徴兵を逃れた方々にインタビューしたのですが、お会いした全員が、罪悪感や複雑な思いを抱えながらも明るく生きていらしたのです。その生き方や振る舞いに、強い影響を受けました」
希望のある書き方をしたい
以降、取材では、対象者の葛藤や苦しみを聞き出しながらも、「暴くのではなく、希望のある書き方」を徹底するようになりました。
「取材した人とは親密に付き合いたい」と、原稿は取材相手に見せ、信頼関係を大事にしながらルポをまとめています。
出版不況にどう抗うか
目下の悩みは、昨今の出版不況。特に2000年代に月刊誌が軒並み休刊になって以降、発表の場が極度に少なくなりました。
割に合わない仕事も多く、「活字文化がなくなるか、こっちが行き倒れるかの勝負」などと笑ってみせます。
——が、ルポを書くこと自体へのこだわりは消えません。
「自分の知らない分野と出会え、尽きない学びがある。35年以上やっていますが、こんなに面白い仕事はほかにないな、と今でも思いますね」
◆やまむら・もとき 1960年北海道苫小牧市生まれ。地元の活動では、西東京市図書館協議会委員も務めています。2015年度に多摩六都フェアで実施された「映像制作(ドキュメンタリー)ワークショップ」に参加。その制作映像はhttps://www.youtube.com/watch?v=eOvmK_MbbpUで見られます。