最先端照明が縄文土器を照らす 東村山市在住の有機EL研究者が寄贈

東村山ふるさと歴史館で2台が稼動

有機EL照明を備えた展示ケース2台が、市在住の技術コンサルタント・當摩照夫さんから贈られました。東村山ふるさと歴史館では現在、市内の下宅部(しもやけべ)遺跡から出土した遺物2点を収め、特別展示を行っています(※編集部注・このときの特別展は終了しています)。

有機EL照明付き展示ケースの説明をする、寄贈者の當摩照夫さん(右)と渡辺尚東村山市長

展示物を傷めない

贈られた展示ケースは、有機ELパネル3枚を設置した幅・奥行とも450ミリ、高さ1600ミリのものです。上部は4面が透明で、四方から展示物を鑑賞できる構造になっています。當摩さんも所属する、「有機EL照明実用化研究会」が製作協力しました。

有機EL照明の最大の特徴は、紫外線や赤外線を出さず、発熱もほとんどないため、展示物を傷めないことにあります。

また、自然光に近く、影も出にくいことから、展示物鑑賞に適しています。現在、東京国立博物館などでもその導入が進んでいます。

 

高額なため、市町村の博物館で設置するところは少ない

ただ、展示ケース自体は注文に応じて製作されており、安いものではありません。特に、エアタイト(密閉型)などにすると約1000万円にもなるため、市町村の博物館で設置しているところはほとんどないというのが実情です。

そんななかで同館に展示ケースが贈られたのには、同市に貴重な遺物があったことが大きいといえます。

寄贈した當摩さんは、「研究者として有機ELにかかわってきて約20年。個人として、それを何か形にという思いをかねて持っていました」といいます。

そうしたなかで、同市に下宅部遺跡の貴重な遺物が多数あることを知り、「これがもっと広く知られ、それによって地域活性化につながれば」と、今回の寄贈を思い立ったとのことです。當摩さんは「下宅部遺跡の遺物は国の重要文化財にもなれるような貴重なもの。この寄贈が呼び水になって、より良い展示や認知度アップにつながっていってほしい」と話します。

(※編集部注:この寄贈の後、2020年に、同遺跡の遺物は国の重要文化財に指定されました=https://www.town-t.com/?p=9210

 

3000年前の遺物が最先端の光に照らされる

寄贈にあたって同館は、式典も開催されました。

東村山市の渡部尚市長も出席し、「3000年前の遺物が最先端の光を浴びて、私たちの目にくっきりと浮かび上がってくる。それが東村山で起こっているというのが、誇らしい」などとあいさつしました。

 

下宅部遺跡とは

下宅部遺跡は縄文時代後期以降の遺構・遺物を今に伝える遺跡で、土質の関係から状態のよい遺物が多数出土しており、その数は30万点を超えます。

特に縄文時代の漆文化を伝える遺物が貴重で、漆工関連出土品203点と縄文土器16点は、東京都の指定文化財にもなっています。

出土品は「八国山たいけんの里」で保管・展示されており、市では、これらが国の重要文化財に指定されることを目指しています。

(※編集部注:上記にも記載していますが、同遺物は2020年に国の重要文化財に指定されています)

なお、今後は、展示物を入れ替えながら、秋まで特別展を開く予定です。5月29日までは、市在住の写真家・野中昭夫さんが撮影した同遺跡出土品の写真展も開催。入場無料。月・火休館。詳細は同館(042・396・3800)へ。

(※編集部注 イベントは終了していますが、地域情報として掲載を継続しています)

東村山ふるさと歴史館

下宅部遺跡(市のホームページ内)

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