雑木林の若返りをはかる「西原自然公園を育成する会」・池田干城代表に聞く

「木と生きた郷土史、感じてほしい」

 西東京市の西原自然公園では、市民グループ「西原自然公園を育成する会」と西東京市の協働によって、雑木林の更新がはかられています。

林を若返らせるために、計画的に樹木の伐採と植林とを繰り返してきましたが、当初はその作業の一面だけを見て「なぜ木を切ってしまうんだ!」などの抗議の声も多かったそうです。

そうした逆風を受けながら地道に15年続けてきた結果、同公園は明るく蘇り、昔ながらの「武蔵野の雑木林」の姿を見せるようになっています。その活動には、国土交通大臣賞(「みどりの愛護」功労者)も贈られており、全国からの視察も相次ぎます。

活動の意義や成果について、同会代表の池田干城さんに話を聞きました。

西原自然公園を育成する会代表の池田干城さん。同公園にて

20年かけて樹林を再生した

――まず、取り組みの概要を教えてください。

 

「1979年開園の西原自然公園(2ヘクタール)を、本来の武蔵野の雑木林の姿に戻そうと活動しています。

2000年から毎年10アールずつ木を植え替えています。木はクヌギ・コナラを植えて成長に合わせて間伐しています。

これにより、武蔵野らしい明るい雑木林になりました。

今では、草花約40種類、木の花約20種類が季節ごとに咲き、一周600メートルの土の遊歩道からかつてのこの地の光景が眺められる、魅力的な公園になっています」

 

――武蔵野の雑木林」とはどういうものですか?

「今、さまざまな場所で見られる雑木林はうっそうとしたもので、それこそが武蔵野の雑木林と思っている方が多いですが、それは誤りです。そのような雑木林は、実は放置された結果です。

江戸時代のこの地の雑木林は人々の生活に不可欠なもので、畑と同じように人の手で作られ、管理されていました。

主木となるクヌギやコナラは、燃料として最適なだけでなく、しいたけのホダ木になりますし、落ち葉は肥料にもなります。また、林に育つ草は飼料になるし、ドクダミやカンゾウ、シオデなど食用にも利用したでしょう。枯れれば焚きつけにうってつけです。

明治7年の田無の地租改正図を見ると、青梅街道を中心に、南北ともに、宅地・用水・林・畑の順番で整地されているのが一目で分かります。

木々は、15年から20年ごとに伐採され、常に若返りがはかられていました。人の手で管理された明るい林こそ、武蔵野の雑木林なんです」

 

現代に手入れが必要なワケ

――とはいえ、現代の生活上では、木や葉を必要としません。それでも活動が必要なのでしょうか?

「以前、風もない晴天の日中に、突然コナラが折れたことがありました。近くで体操していた人が『命拾いした』と帰ってきたほどの衝撃だったそうです。

折れた木は、推定樹齢80年ほど。茂り出した葉の重みに耐え切れなかったのです。人間と同じで、木も年を重ねて弱るのです。

もともとこの雑木林は、江戸時代からずっと管理されてきました。ですから、現代でも本来は人の手が必要です。

実際、私たちの活動以降、何十年と咲くことのなかった草花がたくさん姿を見せてくれるようになりました。これまでどこに潜んでいたのだろうと感動します。

たとえばアマナという、今や『多摩地区ではもう見られない』と希少植物のようになっている花があるのですが、冬に落ち葉を掃いてやったら、一斉に咲くようになりました」

 

毎年80本ずつ植え替えてきた

――管理をするようになった経緯は?

「15年前、環境保全の活動をしていた市民たちが、林の若返りを目指して市にかけあったのが始まりです。私は、活動が始まった直後からかかわっています。

最初は、かつて行われていた『萌芽更新』を試みました。木を切るとその切り株から新しい株が出てくるのです。それを育てていくやり方で、根本から2本立や3本立になっている木はたいてい萌芽更新の木です。

ただ、残念ながらこの公園では、思ったほどには萌芽更新できませんでした。放ってきたせいで、樹齢60年以上の木ばかりだったからです。そのときにコナラを38本切っていますが、萌芽更新できて今残っているのは12本ほどです。

それで、2回目からは方法を変えて、新たに苗から植えるようにしました。それが11年前。以降は、毎年80本ずつ植えています。10年以上たち、武蔵野らしい光景が広がるようになりました」

 

――15年続けて感じることは何ですか。

「ここに来るたびに、自然の変化に驚きます。会員は30人ほどいますが、みんな同じだろうと思います。結局は、自然の中に身を置くのが好きなんです。

それは会員だけではありません。遊歩道を散歩する人は常にいますし、花が咲く季節には、自発的に世話する人が現れます。

ここは20年くらい前は、ちかんが出る危ない場所でした。子どもは入園が注意されたくらいです。

それが今では、近くの保育園児が毎日来るし、住宅地の中の憩いの場所として地域で愛されています。

この魅力を、もっと多くの人に知ってほしいと思って呼びかけをしています」

 

【リンク】西原自然公園を育成する会

【リンク】西原自然公園 (西東京市ホームページ)

 

(谷注、以下)

西原自然公園のマップ

 

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