西東京市の主婦・村田典子さんが、自身の貯蓄を取り崩しながら、アパートの一室を「寺子屋だるま」として開放し、地域の人々の交流の場にしている。同所はこの7月でオープン1周年。9月からは、不登校になった子のための“高校”も“開校”予定だ。私設のサロンという、ユニークで精力的な活動の狙いなどを聞いた。
――「寺子屋だるま」とは、どういうところですか。
「田無町のアパートの一室を、地域の人々の交流の場として活用しています。
現在は30超の活動があり、フランス語などの語学、健康マージャン、うどんの同好会やつまみ細工など、それぞれ指導者が来て自由に行われています。
また、今は休止していますが、近所の方に食事を提供する活動もしてきました。その回数は約1年で131回になります」
――始めた目的は?
「一言でいえば『居場所』のモデルづくりです。こうした私設の場所が町のあちこちにあれば、市民力が上がるはず。ここで実績を作っていくことで、賛同者が増えればと期待しています」
――理念は素晴らしいのですが、個人で展開するのは難しそうです。
「ここは我が家の所有物件なので、『場所があるからできるのでしょう』と言われることがありますが、実は私も、賃料を夫に払っています。自分の中で一定の額を決めていて、そこまでは貯蓄を取り崩す覚悟でやっています。大事なのは気持ちです。
やり方については、自宅を開放したり、空き家を利用したりといろいろできるでしょう。そういう人を増やすためにも、成功モデルが必要なのだと考えています」
――そのような強い動機はどこから?
「中学生のときに、クラスの子が先生を凶器で傷つけるという事件を体験しました。そのときに、そういう子をどうして救えなかったのだろうと深く考えました。その結論は、周りの人々、地域で支えるしかないのだということです。
私はその後、保母となって児童自立支援施設に勤め、結婚によって西東京市に移ってからは、生活クラブなどに所属して、地域活動をしてきました。
今まで福祉や食などさまざまな活動をしてきましたが、年齢的なこともあり、自分の理想を目指して真剣勝負してみたいという気持ちになっています」
――9月からは、不登校の高校生の居場所をつくるそうですね。
「単に居場所ではなく、文字通りの“学校”です。生徒さんのニーズに合わせて教科の先生を用意し、45分×3コマの授業を展開します。授業料は無料です。
学校に決まった形などありません。3年間通える場所とし、ここがその子の青春の場となればと願っています。生徒を募集中なので、1人でも多くの子に参加してほしいです」
村田 典子 (むらた・のりこ)
昨年「寺子屋だるま」オープン。13年前にも同様のサロンを開いていた。写真のポーズは手話で「会いたい」の意味。
寺子屋だるま 2017年7月オープン。子育て、文化など多彩なジャンルで30を超える活動を展開。介護者の語りの場となる「ケアラーズカフェ」も第2・4月曜日午後に開いている。西東京市田無町4の17の19コーポツカB棟6号室。090・6475・4148