■多摩エリアのワーママに聞く、働く母の在り方。
一口にワーママ(ワーキングマザー)と言っても、大切にしたいものや、環境、悩みはさまざま。そんな十人十色なワーママたちの、モデルとなるような生き方をしている人たちに『タウン通信』が取材しました。第1回の登場は「仕事も、子どもと同じように大切にしたい」と話す、小崎奈央子さんです。
<プロフィール>
小崎奈央子(おざき・なおこ)
株式会社けやき出版/代表取締役社長・編集者
「まちと人をつなぐ」をコンセプトに、東京都多摩地域に関する情報を発信しているけやき出版。一般書・地域情報誌・社史や自費出版などを手掛けており、1997年に創刊した季刊誌『たまら・び』は、7月1日発行号で100号を迎える。同記念号では「多摩ってなんだ?」をテーマに、多摩全域を紹介。それぞれの町で生きる人たちの「WEST TOKYO STYLE」を探る。
<目次>
イントロダクション(※本ページです)
第1回 出産で一度は手放した、憧れの職業。(※7月3日公開)
第2回 肉体的につらくても、離婚で心は自由になれた。(※7月4日公開)
第3回 シングルマザーとしての葛藤と決断。(※7月5日公開)
第4回 ママだからって、不自由じゃなくていい。(※7月6日公開)
■2児の母で、シングルマザーで、社長で、編集者。
「基本的に、女性って子どもありきというか。子育てに影響が出ない範囲で仕事をしている人が多いと思うんです。でも、私はそうではなくって。『あなたは私の子どもとして生まれてきてしまったんだから、申し訳ないけど受け入れて。仕事が大好きで仕方ないお母さんと一緒に生きてね』っていうスタンスでやっています。……自分でも、ちょっと身勝手かなとは思うんですけど」
そう言って、いたずらに笑う。インタビューを行ったのは、彼女が代表取締役を務める“けやき出版”のオフィス。一人で出社していた彼女に、土曜の取材となったことを詫びると「大丈夫です。やること、いっぱいあるんで」と、あっけらかんとした様子で言う。気を遣っての返事ではなさそうだった。
彼女は、私が出演した地元FM局のラジオ番組のパーソナリティーの一人だった。ほどなくして、Facebookでつながる。いの一番に見た彼女の投稿は、満面の笑みでシャボン玉を飛ばす、まだ幼い少女の写真。次のような文章が添えられていた。
「どこをどう走っているのか分からない毎日の中、彼女の笑顔に癒される束の間のひととき。とはいえ、この写真も昭和記念公園の撮影の待ち時間だったりして。あまりに一緒の時間が少なすぎて申し訳なさでいっぱいだけど、こうやって楽しそうに過ごしている姿を見ると救われます。私と違ってまっすぐ育って良かった笑」
ラジオで共演した時は、30代前半の同年代だと思っていたので、私より7つも年上であること、小学生ほどの娘がいることに驚いた。
ウェブで彼女の名前を検索すると、過去のインタビューがいくつもヒットした。娘のほかにも高校生の長男がいること、学生時代からの憧れだった職業を出産で一度は手放したこと、仕事への価値観の違いを理由にシングルマザーになったこと、一社員としての編集者だった彼女が社長になったのは予想だにしない出来事だったことを知る。
◆
取材後、写真を撮るために近くの公園に向かう際、歩きながら話した彼女の言葉が忘れられない。
「結婚や出産で、仕事を諦めなくてもいいんだよって。それは伝えたいかな。記事のどこかに書いておいてください」
自分の仕事を、我が子と同じように大切に思う女性たちに、この記事が届けばいい。母であり、社会人でもある一人の人間として、罪悪感に胸を痛ませる必要はないのだと。
<目次>
イントロダクション(※本ページです)
第1回 出産で一度は手放した、憧れの職業。(7月3日公開)
第2回 肉体的につらくても、離婚で心は自由になれた。(7月4日公開)
第3回 シングルマザーとしての葛藤と決断。(7月5日公開)
第4回 ママだからって、不自由じゃなくていい。(7月6日公開)
(文・石川裕二)