和紙職人・北村春香さんは、小平市の自宅を拠点に、あきる野市や八王子市、檜原村など多摩地域を飛び回って、和紙作りに勤しんでいます。
地域で採れる素材、地域の水で作ることがこだわり。
11日(水)から16日(月)まで、西武柳沢駅そばのギャラリー「スペースコウ」で、若手の竹籠職人とコラボした作品展を開きます。
(※編集部注 イベントは終了していますが、地域情報として掲載を継続しています)
雑誌の特集に感動
北村さんの和紙の世界への入り口は、高校生のときに見た雑誌でした。
エビや桜貝などが含まれた和紙が紹介されていて、「こんなものがあるんだぁ」と感動したといいます。
大学進学後に、1カ月ほど石川県の和紙工房に住み込み、和紙作りを体験。いっそう興味を深め、以来、暇を見つけては全国の和紙工房を訪ね歩くようになりました。
多摩で、地元素材を使う醍醐味を知る
多摩地域が活動のフィールドになったのは、東京都無形文化財「軍道紙」の紙すき体験などができる「あきる野ふるさと工房」に職を得られたのが縁です。
ここで活動するなかで、原料となる楮(こうぞ)を地域で採取し、地域の水で漉(す)くことの醍醐味を知りました。
出産もあり、2年ほど前に独立。今は、子育てに追われながら、書道家や紙加工業者などからの注文に応えています。
「一家を養うのが夢」
「良いものを作って、たくさんの注文に応えたい。私の稼ぎで、一家を養うのが夢なんです」
と、さらりと話す北村さん。
「?」
一瞬、耳を疑いました。おかしくはないけれど、すぐには腑に落ちない言葉。
真意を質すと、なんとそれは、「探検家である夫の活動を支えたい」というものでした。
「実は私も学生の頃は探検部でした。その縁で出会った夫・昌之は、メコン川の水源を突き止めたメンバーの一人。夫が探検に出るときは不安もありますが、それ以上に、生き生きした姿を見せてほしいんです」
自身は、和紙の未知に向き合う
かく言う自身が生き生きするのは、やっぱり紙に向き合うとき。
和紙には未知なことが多く、今でも発見や驚きが尽きません。未知へ挑んでいくのは、探検と同じです。
「修業時代の探訪で、伝統に沿わない紙作りも見ました。本当の和紙作りとは何だろう? それが私の原動力。
それから、伝統を守る先輩方から託された、『和紙をよろしく』『軍道紙を頼む』の言葉に突き動かされています」
◆きたむら・はるか 1973年、東久留米市出身。東京手すき和紙工房主宰。軍道紙未来研究所主宰。一般社団法人東京和紙「東京産の原料、東京の水、東京の職人でつくる東京和紙」の立ち上げに参加。和紙文化研究会など所属。照明塾講師。小平市在住。
竹籠職人と共同展
北村さんと、竹籠職人・関田徹也さんの展覧会「武蔵國の籠と紙」は16日まで「スペースコウ」(西東京市柳沢6の1の11)で開催。午後11時から午後6時(16日は5時)まで。竹籠、和紙など展示。14日(土)は午後1時30分からトークイベント(要予約)。詳しくは同ギャラリー042・468・8558へ。
(※編集部注 イベントは終了していますが、地域情報として掲載を継続しています)