[この町この人]作曲家でクラリネット奏者 白川毅夫さん

九死に一生の事故を乗り越えて

作曲・編曲も行うクラリネット奏者。8日には清瀬聖母教会の響きをイメージして作った曲「Klang―響き―」を初演する。演奏の根底にあるのは35年前に奏でた自分自身の音。九死に一生を得た自動車事故後にクリアな世界を見た――。

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5歳でピアノを始め、高校からクラリネットに転向。音大に進み、卒業後はドイツに渡った。

事故が起きたのは12月23日のこと。帰国のため空港まで送ってもらうアウトバーンで、大型トラックに追突された。脳内出血。専門病院で緊急の開頭手術を受けた。

「よく助かったなという事故でしたが、後部座席で寝ていたので、脱力状態だったのが良かったのでしょうね。クリスマス前に専門医が勤務していたことなど、幸運が重なったと思います」

脳が炎症で腫れるため、半年間は左側の頭蓋骨を取った状態で過ごした。何とか日常生活は送れるものの、視界が歪む、左右のバランスが取れない……という苦労の連続。それでも脳には調整力があり、少しずつ補正し、楽器の練習もできるようになった。が、ようやく慣れた頃に、頭蓋骨を戻す手術が――。

「また最初からやり直しか、と不安でしたね」

ところが、待っていたのは見たことのない世界だった。あらゆるものがクリアに、生き生きと映る。植物は細胞まで見えるように思った。

「アナログから一気に8K映像になった感じです。赤ん坊はああいう世界を見ているんじゃないかと思いました。何もかもが純粋なのです」
 

退院のときに演奏の機会があり、モーツァルトのクラリネット協奏曲・第2楽章を吹いた。自分でも自分が演奏しているとは思えないようなピュアな音。以来それが、目標とする音となった。

「生きていると雑念が入ってきてしまい、あのときのような純粋な状態にはなれないのです。でも、ああいう音が自分の中に残っているのは宝物だと思っています。少しでもそれに近い音を、お届けしていきたいです」

 ◆しらかわ・たかお 1964年東京都出身、都立小平高校、桐朋学園大学音楽学部、ドイツ音楽アカデミー・デトモルト卒業。一般社団法人日本クラリネット協会理事。3作のCDアルバムがあり、新作を来月発表(後述)。クラリネット、大人から始めるピアノレッスンの生徒を随時募集。詳細はメール(takamaru.cl@gmail.com)で。
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8日のコンサートは清瀬聖母教会(梅園1の1の25)で午後2時から。フルート、バリトン、ピアノの演奏も。2000円(学生1000円、未就学児無料=要予約)。詳細は山本さん(TEL 090・2451・3257)へ。

※白川さんの弦楽との作品を収録した新作CD「Lieblings―お気に入り―」は1月12日発売。2000円。

同日午後1時30分からと4時から豊島区駒込の「アーリーバードアクロス」で記念コンサート。3000円。詳細はオフィス グランシェ(TEL 03・3862・2044)へ。

コンサート情報の詳細はこちら記事

白川毅夫さん

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