弱者に優しい社会へ、情報共有を
44歳で肺腺がんステージ4と診断され、2人の子どもを育てながら闘病を続ける水戸部ゆうこさん(50)の企画で、23日㈯㈷に小平市中央公民館で、がん関連の情報を広く伝えるオープンセミナーが開かれる。「誰もがなり得る時代。健康な方にも聞いてほしい」と参加者を募集中だ。
誰でも参加できるオープンセミナー
オープンセミナーは、自身が罹患し、情報不足や周囲の理解不足に苦しんだ水戸部さんが「多くの人にがんのことをもっと知ってほしい」と企画するもの。がん医療や制度は日進月歩の状況にあるため、常に最新の情報に触れてほしいという。
現在、小平市では、水戸部さんの呼びかけで発足した「がんサロン~CancerおしゃべりCafe」が隔月ペースで開かれており、がん患者や家族たちが交流する場となっている。今回のセミナーはいわばその拡大版で、誰でも参加できる。
小学生2人の育児中に突然がんと診断
中心になって活動する水戸部さんががんの診断を受けたのは6年前。咳が止まらなくなり受診したところ、リンパ節転移もしているステージ4と診断され、頭が真っ白になった。当時、2人の子どもは小学5年生と2年生。手術も放射線治療もできず、仕事も辞め、孤独でトンネルをさまよっているような日々を送った。
転機になったのは、オンラインで実施されていたがん患者会との出会い。子育て中の若い人たちが集まる会で、同じ境遇の仲間との交流に救われた。
しかし一方で、疑問に思うことも増えた。特に忘れられないのは、子どもの学校のPTA役員を決めるときのことだ。「病気でできない」と訴えたものの、特例を認めるべきでないという意見にぶつかり、保護者の間で採決されることとなった。
「2人に1人ががんになる時代で、特に乳がんは40代、50代に多い。誰でも私の立場になり得るのに、どうして理解してもらえないのだろうと悲しくなりました。結局、がんへの無理解が根底にあるのだと思います」
こうした経験があり、「それならば私ががん患者の状況を伝えていこう!」と、がんサロンを展開し、ラジオ番組出演やセミナー講師を務めるなど、積極的に話をしていくようになった。昨年4月の誕生日には書籍『がんなのに、しあわせ』も出版している。
「病気になって分かったのは、頼れるのは近くの方たちということ。今は地域の交流を深めることが楽しみになっています」と水戸部さん。毎月第2木曜日には2時間弱だけの臨時「駄菓子屋」も運営し、子どもたちと交流している(会場は学園東町2の4の11)。
オンライン参加も可能
23日のセミナー「~だれにとっても大切なこと~使える社会資源を知ろう! アドバンス・ケア・プランニング(人生会議)を考えてみよう!」は午前10時から11時45分まで。講師は国立がん研究センター中央病院の認定がん専門相談員・清水理恵子さん。無料。オンライン(Zoom)参加も可。
申込はこちらから。メールは(cancercafe2022@gmail.com)へ。
なお、水戸部さんへのロングインタビューも掲載中。
【取材余話】
水戸部さんとは同年代で、長男の年令も同じ。がん発覚から今日までの闘病のお話は、自分にもあり得たこととリアルに感じられ、とりわけ家庭生活・育児における水戸部さんの困難を思わずにいられなかった。それだけに、PTAをめぐる話には憤りを覚えたが、一方で、水戸部さんが本当にお元気に見えたのも事実。「ステージ4のがんです」と言われてもとても信じられず、がんへの無理解が自分にもあることを認識させられた。普段はやらないことだが、上記記事とは別にインタビューのほぼ全部の文字起こしをしたので、少々長い記事だがぜひお読みいただければ。水戸部さんの『3年後にこの世にいないとしたら、今できることをやらないと』という思いが爆発する」という言葉は誰にとっても真理だと思う。(谷)
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