[シリーズ・防災を本気で考える]最終回 担当職員インタビュー

8月に防災計画を見直し 西東京市・危機管理課課長にインタビュー

南海トラフ地震が現実味を帯びるなか、西東京市の震災時の火災リスクが多摩地域トップクラスと分かった――。同市では、8月に地域防災計画を修正した。東京都による「首都直下型地震等による東京の被害想定」の見直しなどに連動するもの。新たな状況が見えてきたなかで、いま市民一人ひとりができることは何だろうか。この機会に、西東京市危機管理課の課長・仲誠広さんに話を聞いた。

(写真はイメージです)

 

初期消火の重要性

「8月末の防災会議をもって、『西東京市地域防災計画』が修正されました。背景にあるのは、東京都の『首都直下型地震等による東京の被害想定』が見直された際に、西東京市の火災リスクが多摩地域でトップクラスであることが判明したからです」

と話す仲さん。

西東京市の火災の被害想定は、2012年に都が公表したものでは681棟だったが、22年には3537棟に見直されている。地震での火災といえば、能登半島地震で発生した石川県輪島市の観光名所「朝市通り」で200棟以上、約5万平方メートルが焼失したことが記憶に新しいだろう。

「木造住宅の密集地域は火災のリスクが高まります。特に、複数の民家で同時に火災が起きてしまうと、対応が困難になります。そこで重要なのが、消火器などによる初期消火です」

つまりは、住民による日頃の備えが大事ということだ。今回の防災計画の修正によって、各家庭での備えや防災市民組織の必要性が改めて見直されている。

 

避難所運営に市民の力

大規模な災害が起きた際には、市内にある27の小中学校が避難所になる。避難所を開設するのは市職員、民生委員、自治体関係者などで構成される避難所運営協議会のメンバーだ。

「各校の避難所運営協議会のメンバーは10人前後。しかし、協議会の人間が被災する可能性を考えると、避難所の運営に十分な人数とは言えません。地域のみなさんで運営していただくのが一番なので、どんどん地域の方を巻き込んでいきたい」

と仲さん。

今年度は10月27日に市内で総合防災訓練が開かれる予定で、「危機管理課が各校の避難所運営協議会と連携して、市内全域で防災訓練ができないかと声を掛けている」とのこと。

 

備蓄の現状

避難所の備蓄はどうなっているのだろうか。まず、給水については、消火栓や水道管に組み立て式蛇口を取り付ける「応急給水栓」によって、給水所が開設可能となる。次にトイレ。災害の影響で下水管が機能しなくなった場合は、非常用トイレが活躍する。

「排泄物を直接下水管に落とせるマンホールトイレを、来年度までに避難所の機能を持つ全校に備える予定です。また、在宅避難に備えて、ご家庭での簡易トイレや凝固剤の備蓄をお願いしております」

気になる食糧は、避難所避難者数の2日分が備蓄されている。それで十分なのか今後見直していく予定というが、「市民の皆さま全員に十分な量をお渡しできるわけではないので、やはりご自宅での備蓄を進めていただきたいです」と仲さんは呼びかける。目安としては、最低でも3日分、できれば7日分を備蓄してほしいという。

 

体が動かない人には…

ところで、自ら避難することが困難な人は、どのような備えをしておけばいいのだろうか。これには市の「避難行動要支援者個別避難計画」の作成が推奨されている。避難行動要支援者の情報は警察署や消防署などに提供され、災害時の安否確認や避難支援などに活用される。

もっとも、被害状況によっては避難計画通りにいかないことも当然あり得る。その点では、普段から近隣住民との関係を築いておくことが大切だ。

「非常時の助け合いで頼りになるのはご近所さんです。これは身体に不自由のある方に限った話ではありません」

と仲さん。

「行政も可能な限り力を尽くしますが、我々の力だけではどうしようもない部分もあります。まずはご自宅の備えを見直していただければ。地域での助け合いが被害を最小限に抑える力となるので、一人ひとりの力をお借りしていきたいです」

なお、災害計画は市ホームページ、情報公開コーナーで閲覧できる。

西東京市危機管理課の仲誠広課長

※連載「防災を本気で考える」は今回で終了です。

2024/9/4

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