民泊「matasan」を経営
2018年6月15日の民泊スタート時から、自宅の3室を開放している。当時、共同通信の取材に応じた影響もあり、全国の地方紙でその〝開業〟が取り上げられた。注目された理由の一つは、リタイア後の第二の人生での社会活動にもある。夫婦ともに70代後半となった今も、宿泊客の送迎や洗濯のサポートなどに駆け回っている。
民泊「matasan」の一室で
妻・詩恵さんの祖父が提供してくれた西東京市柳沢4丁目の広い土地。子ども3人と祖父らを交え、7人で住むつもりで大型の住宅を建設した。
が、団地住まいに慣れていた子どもたちは「2階に行くのが怖い……」と、あえてぎゅうぎゅうに机を並べる生活に。
「上の部屋がもったいないね……」
と頭を悩ませた夫婦が思いついたのが、近隣大学に通う学生たちへの「下宿屋」。食事付きで募集するとすぐに応募があり、武蔵野大学や亜細亜大学の学生が1年、2年と暮らしてくれた。
数年は順調で、大いに家計の助けにもなったが、子どもが中学生になった頃に「部屋がほしい」と言い出したため、一旦「下宿屋」は中断。3人とも独立した後に再開しようと試みた。ところが、なぜか応募がない。
「下宿という言葉が通じなくなっていたんですね。『まかない付き』なんて言ったらなおさら。時代の変化の速さを感じました」
やる気をそがれ、しばらくは2階が物置部屋と化したが、民泊が話題になると、「老後の生きがいにもなるのではないか」と思いが再燃した。
自然な流れで専門サイトに登録すると、意外にも国内からの宿泊客が多く来た。前述の大学に加え、東京大学(旧東大農場)や早稲田大学(東伏見キャンパス)、武蔵野美術大学(小平および昨年まであった吉祥寺)などに近いことが有利に働き、学術・スポーツで短期交流に来る若者たちが選んでくれるように。長い人だと、1カ月以上滞在していく。
もちろん、中国、韓国を中心に、外国人も泊まりに来る。親しくなった中国の美大生から、名刺のデザインをプレゼントされたこともあった。
ちなみに、施設名は「matasan」。由来は、正忠さんの愛称だ。
「正忠って言いにくいでしょ? それでみんな、私のことをマタさんと呼ぶんです。妻はウタさん。マタさん、ウタさんで頑張ってます」
多くの訪問者との日々の交流が、夫婦円満、元気の秘けつだ。
◆すえみつ・まさただ、うたえ 下宿業を経て、西東京市柳沢で2018年から民泊「matasan」を経営。スーパーホスト認定。正忠さんは元武蔵野市役所職員で、退職後、石神井川清掃などの環境保全活動を行う「Мec西東京」を主宰。ほか、琴や茶道の普及活動にも関わる。
2024/9/4
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