国の登録有形文化財「顧想園」など
武蔵野の面影を色濃く残す東久留米市柳窪地域。NPО法人「東久留米の水と景観を守る会」では、春と秋に旧家などを巡る見学会を開いている。今月27日㈯の開催を前に、同会の案内で先駆けて歩いてみた。
「航空写真で見ると明らか。この一帯だけ、木々が里山のように茂っており、私たちはここを『緑の島』と呼んでいます」
そう案内してくれたのは同会代表の加藤隆章さん。この地域に豊かな緑が残るのは、地権者有志たちの働きかけによる。急速に進む宅地化からこの地域の緑と景観を守ろうと、開発を制限する「市街化調整区域」を申請し、1990年に12・2ヘクタールが指定された。
これにより一帯には、江戸の後期から明治時代にかけて建造された伝統的な大型民家や、白壁の土蔵群、カシ・ケヤキなどの屋敷林、竹やぶ、茶畑、ヒイラギの生垣などが残ることになった。
その景観や人々の思いを知ってほしいと、同会では20年ほど前から見学会を開いている。
コースは、まず畑で、柳窪発祥の「柳久保小麦」を見学。取材日には偶然、栽培者の奥住寿男さんと会え、「伝承することで皆さんに喜んでもらえれば」のコメントも頂いた。
続いて、江戸時代から残る土の道を行き、柳窪地域最古という樹齢約400年のケヤキがある旧家などを訪ねる。家は桁行10間、前庭と奥庭を隔てる中雀門があるなど、共通した特徴が見られる。
ハイライトは市内唯一のかやぶき家屋がある村野家住宅(顧想園)だ。
ケヤキの一枚板を使用した薬医門や、3つの土蔵、奥庭には枯山水の石庭がある。1838(天保9)年築の主屋など7つの建造物は国指定の登録有形文化財。ちなみにここは1866年の武州世直し一揆で襲撃され、間一髪で打ちこわしを免れた歴史がある。
「いずれも個人所有の家なので普段は敷地内に入れません。この機会にぜひご見学ください」と同会の富塚健二さん。
見学会は27日㈯午前9時30分からと午後1時からの2回。定員各回30人、応募多数時抽選。参加費600円。
◎顧想園